迫る、物流業界の2024年問題。自動化や機械化以外にも、身近なところで改善できること

2024年04月28日 10:05

画・「業績なくして賃上げなし」。高所得層ほど賃上げ割合多く、二極化進む。

「働き方改革関連法」により、トラック運転手の年間の時間外労働が960時間に制限される

 2024年4月に大きな転換期を迎える物流業界。「働き方改革関連法」により、トラック運転手の年間の時間外労働が960時間に制限されることで、ドライバーの労働環境が大幅に改善されることが期待される一方、運転手の労働時間が減少することによって、賃金の減少や物流コストの上昇、人手不足など、ドライバーと運送会社と荷主、それぞれの立場から様々な問題が起こることが懸念されている。労働環境の改善と、これらの問題解決を両立するためには、細部にわたって、いかに効率よく、合理化を進めていくかが一つのポイントとなりそうだ。

 物流の効率化といえば、物流施設の自動化や機械化の推進、ドローン配送など、物流DXの推進されているが、大掛かりなものだけではなく、身近なところから改善していくことも重要だ。例えば、入出荷検品作業で使用されるラベルの印刷などが挙げられる。

 これまでは、作業で必要な物流ラベルは事務所に備え付けられている卓上プリンタで出力されることが多かった。しかし、これでは作業現場との往復に時間と手間がかかる。また、ラベルの貼り間違えなどのケアレスミスも発生しやすくなってしまう。そこで、現場のラベル貼り業務を作業員が持ち運びできるコンパクトなモバイルラベルプリンタが使われるようになった。必要なラベルを必要な場所で随時発行できるようになるので、作業効率は格段に上がるだろう。大量に印刷する必要のある時は、これまで通り事務所のプリンタで出力するように使い分ければいい。

 これまでの一般的なモバイルプリンタだと、発行速度が遅かったり、バッテリーが減るにつれて印字がかすれてしまったりすることがあったが、最新のモバイルラベルプリンタは大きく進化、改善されている。

 例えば、サトーホールディングス株式会社が22年に発売開始した4インチ対応のモバイルプリンタ「lapin(ラパン)PW4NX」は、クラス最速となる最大152㎜/秒という卓上型プリンタ並みの発行スピードと、バッテリーが無くなる最後の1枚まで濃い印字が可能な優れた印字性能の両立を実現。さらにIP54 規格準拠の防じん・防滴仕様で、雨風が吹き込む環境下や屋外の業務にも対応することで、物流倉庫だけでなく、保守メンテナンス業務における作業報告書や領収書等の発行用途にもシェアを伸ばしている。

 ブラザー工業株式会社では、WMS(倉庫管理システム)と連携できるモバイルプリンタを現場の運用に合わせてラインナップし、提案している。例えば、腰付け可能なコンパクト設計と堅牢性を両立した2インチモデルの感熱モバイルプリンタ「RJ-2150」や、コンパクト性に優れた上に業界クラス最高の対落下衝学性能2.1mと、IP54に準拠した防塵防滴性能を持つ4インチモデルの「RJ-4250WB」、さらにモバイルではないものの、作業現場に直接おけるコンパクトな躯体で、ラベル作成ソフトと連携することで様々なバーコードの発行も可能な熱転写ラミネートラベルプリンター「PT-P950NW」など、必要な機能を必要な場所で無駄なく使えるプリンタが揃っている。

 そして今、モバイルプリンタのさらなる小型化、軽量化、省エネ化が期待されている。その背景にあるのは、感熱モバイルプリンタの核となる部品、つまり感熱紙など熱を加えることで発色する印字メディアへ印刷を行う「サーマルプリントヘッド」の進化だ。

 従来の感熱モバイルプリンタは、印字速度と印字品質を保つためリチウムイオン電池2本で駆動させることが主流だった。そんな中、ローム株式会社が昨年末に発表した新構造のサーマルプリントヘッド「KR2002-Q06N5AA」は、リチウムイオン電池1本でも高速・明瞭な印字を実現できるという。

 これまでの構造を抜本的に見直し、発熱した熱量を感熱紙や転写リボンに効率よく伝達することに成功した上、サーマルプリントヘッドを動かすドライバーICと配線構造の改善により、電力を効率よく熱エネルギーに変換することで印字効率を向上。その結果、リチウムイオン電池1本(3.6V)駆動で、高性能印字と従来品比で約30%もの省エネを実現している。

 電池が2本から1本になっても、印字速度と品質、バッテリー持続時間が保たれるため、より小型かつ軽量で使いやすいモバイルプリンタが期待できる。

 こうした製品の導入は、その現場の単体の作業で見れば、ほんの数秒、数分程度の改善にしかならないかも知れない。省エネも同様だ。しかし、日々大量の物品を流通し、需要を伸ばし続ける物流現場では、そんなわずかな改善が積み重なることで、業務全体の大きな改善となり、効率化にもつながるはずだ。(編集担当:藤原伊織)