【コラム】原発推進の政府は福島の甚大・凄惨な光景忘れるな

2024年05月26日 11:37

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3年ごとの「エネルギー基本計画」見直し時期を迎え、経団連や電事連が原発推進をめざす動きを強めている

 3年ごとの「エネルギー基本計画」見直し時期を迎え、経団連や電事連が原発推進をめざす動きを強めている。最たるものは電事連の林欣伍会長が17日の記者会見で求めたエネルギー基本計画からの「可能な限り原発依存度を低減する」との大方針を示した文言の削除だ。

 「可能な限り原発依存度を低減する」との文言は、今も続く東京電力福島第一原発事故の凄惨な状況を踏まえ、原発事故発災直後の教訓と原発政策の深い反省から生まれた「原発に依存しないエネルギー供給姿勢」を明確に示したエネルギー基本計画を考える上での『主柱』といえるものだ。

 経団連と原発事業者らでつくる電事連は、この部分を削除させ、原発新増設、建て替えを政府のエネルギー政策として推進させたいと考えている。

 原発事故の放射性物質のよる汚染のため今も「帰還困難区域」が残る。貴重な日本領土に住めない地域を作り出したのが原発だった。事故当時、最大16万人超が住まいを離れざるを得なかった。

 緊急避難をやむなくされ、家族のように大事に育てていた牛たちが牛舎にそのまま取り残され、餓死し、ミイラ化している、あまりに凄惨な光景がドキュメンタリー番組で紹介された。「原発安全神話」を唱え増設し続けた電力会社や政府に怒り以外の何物も覚えなかった。

 こうした貴重なドキュメンタリー番組をこそ、エネルギー基本計画に携わる審議委員の方々全員にじっくり見ていただきたい。

 凄惨な光景は原発が作り出した。原発が自然界を壊し、牛たちを殺した。また原子力規制委員会は原発の安全性を保障するものではない。基準を作り、基準をクリアしているかどうかを審査する機関である。原発の安全性を保障しないし、できないだろう、その視点を忘れず、エネルギー政策を考えることが重要だ。

 原発推進派は原発新増設、建て替えの必要を強調する。その理由づけはいくらでもある。簡単な話、脱炭素のために必要、データセンター新増設で安定的な電力需要の確保は欠かせない、半導体工場の建設計画が目白押しなどなどがそれだ。原発に頼らず、いかに需要に答えるかは電力事業者のすべき事業者努力の範囲。

 SNSでは原発事故により「人々は暮らしを追われ、希望を絶たれた。同盟国すら食品の禁輸措置に踏み切り、国内では災害ゴミすら受け入れられず、最悪なことに今現在も原子力緊急事態は収束しておらず、見通しすらたたない」

 「この事故の責任を取るという名目で既に何十兆円もの負担を国民に押し付けている。日本は四方にプレート境界があって、体感のない揺れを含めれば絶えず地震が起こっている。2011年以降は特に増加傾向。地震が起きる度、原発がどうなったか、国民のほぼ全員が心配している。その度に御用学者がとりあえず大丈夫だと火消しに大忙しだ。前回の原発事故では、殆ど誰も責任をとっていない。無責任状態で原発を運転している状態」との声もある。

 筆者は日本弁護士連合会が「深刻な原発事故被害の再発を未然に防止するため、原子力推進政策を抜本的に見直し、原発と核燃料サイクルからの撤退を求めていく」とした『脱原発実現を目指す宣言』(2014年5月30日)を改めて紹介し、エネルギー基本計画の見直しで「原発依存度の一層の低減」をこそ明記するよう期待する。

 宣言は計画中・建設中含め原発の新増設を止め、再処理工場、高速増殖炉等の核燃料サイクル施設は直ちに廃止する。既設原発は原子力規制委員会が新たに策定した規制基準では安全は確保されないので、停止中の原発の再稼働を含め運転を認めず、できる限り速やかに全廃する。

 原発輸出は相手国及び周辺諸国の国民に人権侵害と環境汚染をもたらすおそれがあり輸出政策は中止する。今後のエネルギー政策は再生可能エネルギーの推進、省エネルギー及びエネルギー利用の効率化と低炭素化を政策の中核とする。これらを踏まえたエネルギー基本計画策定を求めたい。(編集担当:森高龍二)