政府は29日の閣議で、一般職国家公務員給与の引上げを人事院勧告通りに実施すると決めた。給与とボーナスは3年連続の引上げとなる。加えて地域手当や通勤手当などの諸手当についても見直す。行政職の月給は平均で2.76%、1万1183円増となる。
林芳正官房長官は「労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告制度を尊重し、国の財政状況、経済社会情勢など国政全般との関連を考慮し、国民の理解を得られる適正な結論を出すべく検討を行った結果」などとする官房長官談話を発表した。
また談話では地方公務員の給与改定について「各地方公共団体で地方公務員法の趣旨に沿って適切に対応するとともに、国家公務員における俸給及び諸手当にわたる給与制度の整備を踏まえ、地方公務員給与についても適切に見直しを行うよう要請する」と事実上の引上げを要請した。
人事院は初任給の大幅引上げも勧告している。総合職試験(大卒程度)での採用者では初任給が23万円と14.6%の引上げ、額にして2万9300円、率にして14.6%の大幅アップになっている。一般職(同)も22万円と額で2万3800円、率にして12.1%の二けたアップを勧告した。人事院は「人材確保の観点から」としている。改定は今年4月1日に遡って実施する。
加えて、通勤手当の支給限度額を大幅アップ。現行1カ月上限5万5000円(在来線運賃相当額)と上限2万円(新幹線等の特別料金2分の1相当額)から、1カ月上限を15万円(新幹線等の特別料金等の額を含める)にする。
ただ国家公務員の平均年収が2020年国家公務員給与等実態調査で平均基本給33万7788円、各種手当を含めると41万6203円となり、ボーナスなど含め年収は649万7000円になっているのに比べ、国税庁による同年(2020年)の民間給与実態統計調査での民間労働者の平均年収は435万円、22年時でも458万円にとどまっている。
「公務員賃金が民間の平均相場と乖離しすぎていると思いませんか?」との意見もある。官房長官がいう「国民の理解を得られる適正な結論」と言えるのかどうか、国会での法改正案審議では勧告通りがよいのか、世論を踏まえた議論が必要なよう。(編集担当:森高龍二)