自民党は献金の多い企業、業界、団体からの要望・要請を優先し政策を進める。総選挙前にもこうした声が「政治とカネ」問題に合わせて聞かれていた。年度内に決める次期「エネルギー基本計画」(2040年度電源構成目標)でも、それを裏付ける改定が行われることになりそう。
原発への政府姿勢が明らかに東電福島第一原発事故当時に向いていた方向から180度変わる改定を年内に示す「エネルギー基本計画の素案」でも明確になるようだ。
「原発の最大限活用を」と求める日本経済団体連合会や経団連会館内に事務所を置く電力大手10社でつくる電気事業連合会は盛んに「次期エネルギー基本計画」には現行の基本計画にある「可能な限り原発依存度を低減する」との文言の削除をと要請を繰り返してきた。
土壇場にきて、自民党もこれを後押しする形で12日に「原発依存度低減」の削除を求め、政府に提言書を出した。なんと、政府はこの要請通り、文言を削除するようだ。
原発再稼働のみでなく、原発新増設へ加速させたいらしい。「可能な限り原発依存度低減」とのこの文言は東電福島第一原発事故の教訓と原発安全神話への反省から生まれた「象徴的な原発への政府姿勢」を示す文言であった。
にも関わらず、「タガを外す」ことになる。この文言が意味したところは、それほどに重みを持っていた。石破内閣が本当に削除するとすれば、電力の安定供給、脱炭素を御旗に、経団連・電事連、加えて自民党に政府と国民が押し切られたといえよう。
エネルギー供給比率で2040年度は原発依存度2割、火力3~4割、再生可能エネルギー4~5割となるようだが、30年度に比べ原発依存度が2割では同水準にとどまる。そもそも現行エネルギー計画にある「原発依存度はできる限り低減する」とした計画を踏まえれば「10%~15%」にでも引き下げた目標数値を40年度計画で示す事が必要ではないのか。
「可能な限り原発依存度を低減する」と明記されてきた文言は原発に限っては「絵に描いた餅」だったようだ。15年先も5年先と変わらないとした。政府は「基本計画の素案」を年内に発表する。国会で政府素案に対する慎重かつ「実」のある議論を重ねていただきたい。
日本共産党の志位和夫議長は10日、Xで「日本経団連は毎年、自民党について『政策評価』で『課題』を示し、企業献金を呼びかけている。原発再稼働・新増設。労働法制の規制緩和。消費税10%への引き上げ。法人税25%への引き下げ。社会保障給付費の伸びの抑制。 ……。 その通りになっている。これが賄賂でなくて何なのか」と投稿した。法人税は23・2%にまで引き下げられた。
エネルギー問題とともに、大きな課題の「政治改革」も大詰めを迎えている。企業・団体献金禁止を実現できるのか、エネルギー政策の在り様にも大きな影を落としていると思われるこの問題。
石破茂総理は国会答弁で企業献金を「是」とし「企業に政治は左右されない」と強弁するが、左右されていると疑われないためにも、企業や団体による政党や政党支部への政治献金の禁止、献金の隠れ蓑になっている政治資金パーティー券の購入禁止にリーダーシップを発揮されたい。
さきの総選挙では「裏金議員」を公認しなかったり、重複立候補を認めなかった。その姿勢を貫き、国民に支持される「クリーンな政治」に勇気をもって歩んでほしい。自民党政治では「石破内閣・石破総裁」でなければできないことだと感じている。(編集担当:森高龍二)