【コラム】ゼロゼロ融資 放漫経営助長のリスクに熟慮必要

2025年04月13日 08:35

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自民党金融調査会(片山さつき会長)は相互関税の影響を受ける中小企業の支援策にゼロゼロ融資を実施するよう政府に提言するという

 トランプ政権による相互関税で与野党幹部から相次いで出始めた「ゼロゼロ融資」復活提唱。自民党金融調査会(片山さつき会長)は相互関税の影響を受ける中小企業の支援策にゼロゼロ融資を実施するよう政府に提言するという。

 立憲民主党の野田佳彦代表も9日「コロナ禍におけるゼロゼロ融資のような、金融支援、資金繰りについて心配しなくても大丈夫というメッセージを早く政府として出すことが急務」と記者団に語った。日本共産党の山下芳生副委員長も7日の参院決算委員会でゼロゼロ融資復活を求めた。自民から共産まで復活提唱である。

 確かにコロナ禍当時、実質無利息・無担保、返済開始時期の長期先送りは苦境にあえぐ多くの中小・零細事業者を救った。その一方、返済開始とともに「破産」や「倒産」事業所の増えたことも見逃せない。担保を入れ、利息を含む通常返済をしている経営者にとっては怒りさえ感じるのではないか。

 無利息・無担保融資は資金繰りに困った経営者には大いに救いになっただろうが、一時しのぎの、悪く言えば、経営者の経営判断を誤らせ、放漫経営に陥らせ、傷口をかえって広げることになったとはいえないか。

 どのような状況下であっても、経営計画・返済計画を金融機関にきちんと示し、利息を支払い、必要なら担保を提供する経営者こそ、厳しい状況を乗り切れる経営者とはいえないだろうか。「ゼロゼロ融資復活」には慎重になるべきと警鐘を鳴らしておきたい。

 コロナ禍ではゼロゼロ融資利用件数は220万件超、額にして42兆円超が実行されたが、民間金融機関が行ったゼロゼロ融資の焦げ付きは公的機関の信用保証協会が肩代わり、協会が肩代わりして回収できなかった一部は公費で穴埋めされる。利用した事業者は破産手続きで責任回避も。2020年7月から昨年6月までの期間でゼロゼロ融資利用者の倒産は1800件近い。数兆円が焦げ付き。

 この制度では小規模事業者は最大6000万円、中小企業は最大3億円を借りることができた。返済が始まって政府系金融機関で借りた事業者の中には「借り換え」で延命を図るところもある。トランプ政権による「相互関税」の影響を受けての苦境を乗り切れば経営が健全経営に修正できるのか。融資する側はきっちり分析し、経営計画に無理がないかも含め、チェックし、融資を実行するかどうかを決める「冷静な審査」が必要だ。釈迦に説法だが、結果的にそれが事業者を救うことになる。(編集担当:森高龍二)