今回のニュースのポイント
国税庁が公表した令和7年分(2025年分)の確定申告状況から、日本社会の構造変化が浮き彫りになりました。全体の所得税等の申告納税額は4兆6,897億円と高水準を維持。内訳では株式関連所得が15.2%減少した一方、土地関連所得は6.8%増加しました。また、電子申告(e-Tax)の利用率は77.1%に達し、自宅からスマートフォンで申告する人が497万人に急増するなど、行政手続きのデジタルシフトが進んでいます。
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国税庁が公表した令和7年分(2025年分)の確定申告状況等によると、申告所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」)の申告納税額は4兆6,897億円となり、前年を上回る高い水準を維持しました。一方で、その詳細な内訳をたどると、前年まで高い水準で推移していた株式関連の所得金額が減少した一方、不動産関連の所得金額が増加に転じるなど、資産売却益の構図の変化が数字に現れています。
さらに、電子申告(e-Tax)の利用率は77.1%に達し、スマートフォンによる自宅からの申告やマイナポータル連携の利用人員も過去最高を更新しました。今回の統計は単なる税収の記録ではなく、日本人の働き方やお金の流れ、行政手続きとの向き合い方の変容という、二重の変化を映し出していると言えます。
まず全体像をみると、所得税等の確定申告を行った申告人員は2,353万人(対前年比0.6%増)となりました。このうち、実際に申告納税額がある「納税人員」は628万人(同21.3%増)に上り、その所得金額の総計は54兆9,617億円(同7.4%増)、申告納税額は4兆6,897億円(同6.6%増)と、いずれも前年比で増加を記録しました。日本経済が完全な回復局面とは言えないなかにあっても、個人所得の総量は底堅い推移を保っていることがうかがえます。特に所得の中身において目立っているのが事業所得の力強い伸びです。事業所得者の納税人員は154万人と前年から30.6%増加し、所得金額も9兆729億円(同21.6%増)、納税額は9,298億円(同24.4%増)と大きく伸長しており、これが全体の納税額を押し上げる一因となっています。
今回の統計で資産所得の側面から目を引くのは、株式市場と不動産市場の対照的な動きです。株式等の譲渡所得の申告人員は115万人(対前年比2.5%減)となり、所得金額は6兆8,603億円と前年の8.1兆円規模から15.2%の減少を記録しました。前年までの活発なリスク資産取引が一服し、金額ベースでは利食いや損切りなどの動きから縮小した姿が見えます。一方で、土地等の譲渡所得の申告人員は60万人(同4.1%増)に増加し、所得金額は6兆9,394億円(同6.8%増)へと拡大しました。
土地譲渡の所得金額は平成28年分の4.5兆円規模から緩やかな拡大が続いており、都市部を中心とした地価上昇や再開発の継続を背景に、個人の資産売却益の構図において、不動産の存在感が高まった姿が数字の上からも浮き彫りになっています。
また、確定申告を行う人員そのものが中長期的に増加傾向をたどっている背景には、労働市場における「多様な働き方」の広がりも関係しているとみられます。全体の申告人員は平成28年分の2,324万人から現在の2,353万人へと着実に積み上がっています。給与所得以外の収入形態を持つフリーランスの増加や、企業の副業解禁に伴って個人で確定申告を迫られるケースが増えている可能性があり、事業所得者の比重の高まりがその動きをにじませています。
さらに個人事業者の消費税の申告件数が217万件(対前年比2.2%増)、申告納税額が8,416億円(同5.1%増)へと成長しているほか、贈与税の申告納税額が5,038億円(同28.0%増)と大幅な伸びを示していることから、個人間の資産移転や事業活動の裾野そのものが少しずつ広がっている現状がうかがえます。
お金の流れ以上に劇的な変化を見せているのが、行政手続きのデジタルシフト、すなわち「紙からスマホへ」という行政DXの進展です。国税庁の推進により、e-Taxの利用人員は1,814万人(対前年比4.8%増)に達し、申告人員全体の77.1%、つまり「4人に3人」が電子申告を選択する時代となりました。特に顕著なのが、税務署に出向くことなく手続きを行う「自宅等からのe-Tax」の普及です。
この自宅等からの利用人員は949万人(同15.1%増)となり、申告人員全体の40.3%を占めるにいたりました。その自宅等からの申告者のうち、半数を超える497万人(同21.8%増)がスマートフォンから申告を行っており、かつてのような「確定申告の時期に書類を抱えて税務署の窓口へ並ぶ」という光景は、もはや過去のものになりつつあります。
この利便性をさらに支えているのが、マイナポータル連携の推進です。給与や医療費、ふるさと納税などのデータを自動取得して申告書へ一括反映させるマイナポータル連携の利用者は408万人(対前年比31.7%増)へと急増しました。これに伴い、マイナポータル連携の前提となるマイナンバーカード方式による送信人員は789万人へと成長し、従来のID・パスワード方式(115万人)の5倍を超える規模に達しています。この結果、確定申告会場に直接足を運んで申告した人は218万人(同12.9%減)まで減少し、ついに申告人員全体の1割を下回りました。
オンラインでのやり取りが定着するなか、確定申告の手続きにおいても「自宅からの電子申告が当たり前」という新しい日常が定着しています。行政手続きが窓口中心からデジタル中心へ移行した、最も象徴的な例と言えるでしょう。今回の確定申告統計が示したのは、制度から離れる日本人ではなく、デジタル化した制度に適応する日本人の姿だったのかもしれません。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













