行政は「申請を待つ」から「先回りする」へ 政府が目指すAI駆動型国家とは

2026年07月21日 10:02

国会議事堂13

国会議事堂。政府は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定し、AIやAIエージェントを活用した行政運営やデジタル社会の実現に向けた取り組みを進める方針を示した。

今回のニュースのポイント

政府は2026年7月21日、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定し、人工知能(AI)やAIエージェントを行政運営の中心に据える方針を打ち出しました。従来の行政DXは手続きのオンライン化が主な目的でしたが、今回の計画ではAIを活用して行政サービスそのものを再設計する構想が示されています。目指すのは、個人が自ら調べて申請するのを待つのではなく、必要な支援を必要なタイミングで自律的に提案・処理する「自律型」「提案型」の行政です。本記事では政府が描く「AI駆動型国家」の全体像を整理します。

本文
 政府が閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」は、従来のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の取組を加速させ、AI利活用を一体的に推進する「AX(AIトランスフォーメーション)」を推進する方針を示しました。これまでの行政デジタル化は、マイナンバーカードの普及や書面・押印の見直し、オンライン申請窓口の整備といった「手続きのデジタル化」が主軸でした。しかし今回の計画では、人間に代わって複数の作業を自律的に進める「AIエージェント」などの新技術の急速な進展を踏まえ、行政基盤をAI前提で高度化していく方向性を打ち出しています。

 行政内部におけるAIの活用についても、単なる職員の事務作業の効率化ツールにとどまらず、国家の運用基盤として統合していく構想が掲げられました。政府はデジタル庁が開発した生成AI利用環境「源内」について、全府省庁を対象とした実証事業を進め、行政業務における効果検証を行った上で本格利用を目指します。さらに、会議運営など全省庁共通の業務改革を推進するため「ガバメントAI ワークスペース(仮称)」を新設し、AIエージェントと連携した業務システムを開発する方針です。システム開発や情報調達の領域においても、AIを活用したシステム開発(AI駆動開発)の評価軸を試験導入し、行政コストの削減と運用の迅速化を図るとしています。

 こうした内部基盤の変革によって、国民や事業者が享受する行政サービスは従来の「申請主義」から「提案型」へと変化します。これまでのように個人が必要な支援制度を自分で調べ、役所の窓口を訪れて申請書を提出するのではなく、AIエージェントが個人の意思に基づき、必要な情報を自律的に取得・提案する仕組みが構想されています。出産や介護、被災などのライフイベントに際し、マイナポータルなどを起点にAIエージェントが必要な給付金や手続きを提示し、データの連携から自動処理までを背景で完了させる「自律型行政」の構築が目指されます。

 この「提案型」行政を実現するためには、国だけでなく地方自治体の基盤強化とスムーズな連携が不可欠です。計画では、自治体が個別にシステムを構築・運用する負担を軽減するため、クラウド上で共通機能を提供する「公共SaaS」の開発基盤を国が整備する方針が盛り込まれました。また、自治体の基幹業務システム間でのデータ連携を自動化(EDA等)し、法令や制度のルールをAIなどのシステムが処理・活用しやすい形式にコード化する「Rules as Code」を推進することで、住民が一度の届出を行うだけで関連する各種手続きがワンストップで完結する環境を整えます。

 今回改定された重点計画は、単なるデジタル化施策の延長線上の改定にとどまらず、深刻化する人口減少や人手不足を背景に、AIを前提とした行政運営への転換を目指す内容となっています。行政機関の事務負担を抑えながら、国民一人ひとりのニーズに応じた質の高い公共サービスを持続的に提供できるかどうかが、今後の実装に向けた重要なポイントとなりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)