今回のニュースのポイント
経済産業省が公表した令和7年度大学発ベンチャー実態等調査(速報)によると、大学発ベンチャー数は2025年10月時点で6,220社となり、前年度から1,146社増加して企業数、増加数ともに過去最高を更新しました。注目されるのは、増加した企業の約6割が東京都以外で創業されている点です。大学発スタートアップは首都圏中心から地方へと裾野を広げ、新たな地域イノベーションの担い手として存在感を高めています。
本文
経済産業省の調査によると、国内の大学発ベンチャー数は6,220社に達し、前年度の5,074社から1,146社増加しました。企業数、年間増加数ともに過去最高を記録しており、最先端のアカデミアで培われた研究成果を社会に実装する動きが全国規模で加速している状況がうかがえます。分野別ではバイオ・医療、ICT、環境・エネルギーが引き続き高い割合を占めるほか、近年はAI・ロボット関連でも創業が広がっています。
今回の調査で特徴的なのは、前年度から増加した大学発ベンチャーのうち、約6割が東京都以外で創業されていることです。岩手大学や金沢大学、名古屋大学、近畿大学など、地方大学や地域拠点大学でもベンチャー創出が大きく伸びており、スタートアップの基盤が地方へ広がり始めている姿が浮かび上がっています。大学別では東京大学が595社で最多を維持する一方、名古屋大学は114社増、近畿大学も78社増を記録するなど、地域大学を中心とした研究成果の事業化が目立つ結果となりました。
経営体制の面でも、研究成果の橋渡しに向けた新たな変化が見られます。大学発ベンチャーの最高経営責任者(CEO)は依然として大学や公的研究機関の出身者が大半を占めるものの、民間企業やベンチャーでの勤務経験者がCEOに就任する事例も増えています。今後採用したい博士人材の要件としては、アカデミア経験者だけでなく、ベンチャー企業や一般企業での経験を持つ実務人材への需要も高くなっています。研究力そのものに加え、事業開発やマネジメント経験を併せ持つ博士人材へのニーズが高まっており、研究成果の技術的な優位性と経営の現場経験を組み合わせるアプローチが主流となりつつあります。
大学発ベンチャーが安定して育つ環境としては、政府や自治体による助成金・補助金といった外部資金の充実や、企業との産学連携・共同研究の推進が極めて重視されています。これらに加え、大学内のインキュベーション機能や知財戦略、起業家教育の実施など、大学単独の取り組みから行政や企業を巻き込んだエコシステム全体での育成へと舵が切られています。大学はこれまで教育や研究の場としての位置づけが中心でしたが、現在は新たな産業や地域経済を生み出すイノベーション拠点としての役割も期待されるようになっています。ベンチャー創出の裾野が地方へ広がり、実務経験を備えた高度人材の活用が進む姿は、日本のスタートアップ政策が実証実験の段階を越え、産学官が一体となって社会基盤を支える実装フェーズへ移りつつあることを示しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













