銀行は増益、信用金庫は減益 同じ金利上昇でも分かれた地域金融の明暗

2026年07月26日 09:52

日銀3

日本銀行が公表した2025年度の銀行・信用金庫決算では、大手銀行や地域銀行が増益となる一方、信用金庫は3年ぶりの減益となった。(写真は日本銀行本店)

今回のニュースのポイント

日本銀行が公表した2025年度の銀行・信用金庫決算では、大手銀行と地域銀行が増益となった一方、信用金庫は3年ぶりの減益となりました。本業の収益力を示すコア業務純益は信用金庫でも改善したものの、債券関係損益の悪化や経費の増加が最終利益を押し下げました。同じ金利上昇局面であっても、金融機関の収益構造や資産構成によって影響が異なる実態が浮き彫りとなっています。

本文
 「金利が上がれば、銀行は利ざやが拡大して利益を伸ばす」――そう捉える向きは少なくありません。しかし、日本銀行が24日に公表した2025年度の銀行・信用金庫決算は、その見方が必ずしも全ての金融機関に当てはまるわけではない現実を示しました。大手銀行や地域銀行が大幅な増益を記録した一方で、信用金庫は3年ぶりの減益となりました。同じ金利環境でありながら、なぜ結果が分かれたのでしょうか。

 公表された決算数値を整理すると、最終利益を示す当期純利益は、大手銀行(グループ連結)が前年比32.7%増の約6.0兆円、地域銀行(単体)が同37.4%増の約1.7兆円となったのに対し、信用金庫は同16.9%減の約0.2兆円と3年ぶりの減益に転じました。一見すると信用金庫の業況が悪化したかのように映りますが、重要なのは「利益の中身」です。

 本業を示すコア業務純益と、最終利益は必ずしも一致しません。金融機関の本来の稼ぐ力を示す「コア業務純益」を見ると、信用金庫も前年比17.0%増の6,056億円と堅調に伸びています。国内金利の上昇を背景に、貸出関連や有価証券関連の利益が増え、資金利益は前年比7.0%増加しました。貸出利回りの上昇幅が調達利回りの上昇幅を上回ったことで、貸出利ざやも幾分拡大しています。預金を集めて融資を行い、その金利差で収益を得るという本来の金融仲介機能においては、信用金庫の本業収益にも、金利上昇のプラス効果が表れています。

 それにもかかわらず最終利益が押し下げられた理由は、大きく2つあります。

 第1に「保有債券の売却損や損失処理」の影響です。金利が上昇すると、過去の低金利期に購入して保有していた国債などの債券価格は下落します。信用金庫では、保有債券の売却損や損失処理などにより、債券関係損益が4,248億円の赤字(前年は1,572億円の赤字)となり、損益が大きく悪化しました。

 第2に「経費の増加」です。人件費と物件費がともに増加したことで、信用金庫の経費は前年比3.1%増の1兆2,868億円となり、利益を圧迫しました。

 今回の決算結果は、「金利のある世界」への移行が金融機関にもたらす二面性を明確に示しています。貸出金利の上昇や利ざやの改善というプラス面がある一方で、保有債券の価格下落に伴う損失処理や、預金調達コスト・経費の上昇というマイナス面も同時に発生します。「金利が上がれば一律に金融機関が潤う」という単純な構造ではないわけです。

 銀行と信用金庫で明暗が分かれた背景には、収益構造の多様性の違いが関係しています。大手銀行や地域銀行は、貸出利ざやだけでなく、決済手数料や法人向けサービス、さらには株高を背景とした政策保有株式の売却益など、複数の収益源を確保しています。そのため、債券の売却損を他の利益で吸収することができました。

一方、信用金庫は地域密着型の融資業務を中心としており、大手銀行などに比べると収益源の広がりには違いがあります。そのため、債券損失や経費増といった下押し要因が最終利益に表れやすかった可能性があります。もっとも、これは業態全体を見た傾向であり、個々の信用金庫によって収益構造や決算状況は異なります。

金利の上昇が本格化する中で、金融機関には利ざやの改善だけでなく、保有資産の運用や金利変動リスクの管理能力が一段と問われるようになります。地域経済の資金繰りを支える信用金庫が安定した収益基盤を構築できるかは、中小企業へのスムーズな融資や地域金融の持続性にも関わってきます。今後は「業界全体が増益か減益か」という表面的な数字にとどまらず、金利変動の波に対応できる収益構造を備えているかという視点が重要になりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)