技術の日産は終わらない 量子コンピューターが変えるクルマ開発の未来

2026年06月02日 15:59

日産

日産自動車は、量子コンピューター向けアルゴリズムを活用した車両空力シミュレーションの実証に世界で初めて成功したと発表した。開発期間の短縮や次世代の車両開発への応用が期待されている。(画像は日産自動車ニュースリリースより)

今回のニュースのポイント

日産自動車は、量子ベンチャーのQuemixと共同で、量子コンピューター向けアルゴリズムを車両空力シミュレーションに適用し、その有効性を実証したと発表しました。世界で初めて量子コンピューター向けアルゴリズムを車両空力シミュレーションに適用した今回の研究は、従来は1日程度を要していた計算を、数分レベルまで短縮できる可能性を示唆するものです。電動化やソフトウェア開発が進む自動車業界において、今回の発表は次世代の車両開発プロセスにおける効率向上の可能性を示す一例となっています。

本文
 日産自動車は2026年6月1日、株式会社Quemixとの共同研究により、量子コンピューター向けアルゴリズムを車両空力シミュレーションに適用し、その有効性を世界で初めて実証したと発表しました。現在の自動車開発において、車体周辺の空気の流れを分析する空力解析は、燃費や航続距離、走行安定性に直結する重要な工程となっています。しかし、空気の動きを計算する流体計算は非常に複雑で、現在は格子ボルツマン法(LBM)などが用いられているものの、計算時間の長さが技術的な課題となっていました。

 この課題に対し、両社は量子コンピューターと従来型の古典コンピューターを組み合わせた新たなハイブリッドアルゴリズムを開発しました。計算の主要部分を量子コンピューターが担い、周辺処理を古典コンピューターが補完する構成とすることで計算効率の向上を図る仕組みです。この手法を量子コンピューターのシミュレーター上で実行したところ、従来の古典計算と同等の精度で解析結果が得られることを確認しました。現実的な解決アプローチを示した点が、今回の研究成果です。

 今回の成果で注目されるのが、開発スピードを大幅に高速化できる可能性です。発表によれば、従来は1日程度を要していた計算を数分レベルに短縮できる可能性が示されました。もし将来的に実用化されれば、設計変更から解析、改良にいたる開発サイクルが大幅に加速されることになります。近年の自動車開発は、仮想空間上でシミュレーションを行うデジタルトランスフォーメーションが主流となっており、今回の量子技術の活用も、こうした開発プロセスのデジタル化を前進させる可能性を持っています。

 日産自動車は、空力解析以外の分野での活用も視野に入れています。同社は開発プロセスのデジタル化を推進する中で、量子コンピューターの活用について材料開発やモビリティサービス、電気自動車(EV)を用いたエネルギーマネジメントの最適化など、幅広い領域での適用を検討しています。今回の汎用性の高い流体解析分野への適用実証は、そうした幅広い次世代技術開発に向けた一歩と位置づけられます。本成果について、両社は共同で特許出願を行いました。

 自動車業界における競争の舞台が製造工場だけでなく、研究開発の現場にも広がる中、最先端のコンピューティング技術を活用した研究開発の重要性は高まっています。日産自動車は今後、この研究をさらに発展させ、車両空力シミュレーションの実用化に向けた研究を進めるとともに、将来的な車両開発プロセスへの適用の可能性を検討していくとしています。なお、本研究成果は2026年6月4日から5日に開催される量子分野の国際会議「Q2B 2026 Tokyo」において発表される予定です。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)