大日本印刷(DNP)が、東京大学石川正俊教授と渡辺義浩助教の研究チームと共同で、1分間に250ページの速さで紙の書籍を撮影して画像データとして保存できる世界最速レベルのブックスキャナーを開発したと発表。図書館蔵書の電子化サービスなどに向けて2013年の実用化を目指すという。
今回開発されたブックスキャナーは、機械による高速ページめくりと、リアルタイムで実行される書籍の3次元状態認識技術、さらに高速のゆがみ補正アルゴリズムを導入することにより、冊子体のままで、電子書籍の要求解像度での高速スキャンを実現したもの。ページをめくるときに生じる紙面の3次元形状を1秒間に500回の速度で捉え、最も高品質に電子化できる瞬間を、新たに開発した独自のアルゴリズムに基づいてリアルタイムに識別。この識別された瞬間に高精細カメラによる撮像を行い、撮像と同時に補正できるシステムを開発したことで、高速かつ高精細な電子化を実現したという。また、解像度は1インチあたり400画素にまで高めることに成功しており、これにより電子書籍としての利用が可能になっているという。
DNPは、開発したブックスキャナーを自社工場に導入し、図書館蔵書等の書籍電子化サービス向けに、2013年度中の実用開始を検討。さらに、ブックスキャナーの外販についても検討するとのこと。
10月24日から予約販売が開始され、11月19日から出荷の始まったアマゾンの電子書籍リーダー「キンドル」が、発売初日で売り切れと報じられるなど、電子書籍に対するニーズは高い。しかし、既存書籍の電子化には、冊子体を裁断してシート状にする必要があり、また、冊子体のままでのスキャンができる場合でも紙面を平坦な状態にする必要があるため、読み取り速度が十分ではなく、著作権や日本独自の出版・流通システムと並んで、電子化される書籍数が今一歩伸び悩む要因の一つとなっていた。この課題が一つクリアされることで、どこまでこの数を伸長し、市場拡大に繋げることができるのか、大いに注目の集まるところであろう。