2010年に米アップル社からの衝撃的なデビューを飾った「iPad」は、我々のライフスタイルを変える程の大きなインパクトがあった。iPad化の流れは、個人ユースにとどまらず、ビジネスや医療、さらには教育分野にまで波及し、わずか2年足らずでタプレット端末という新たなカテゴリーを巨大市場にまで伸し上げた。さらに、昨年には「iPad mini」をはじめ、グーグルの「Nexus 7」、アマゾンの「Kindle」など、7インチタブレットが大ヒット。そしてついに今月15日には、アップル社の長年のライバルでもあり盟友でもあるマイクロソフトが独自開発したタブレット型端末「Surface with Windows RT」(サーフェスRT)が日本で発売されるということで、タブレットPC市場はいよいよ本格的な戦国時代へと突入しようとしている。
そんな鋭角な右肩上がりで成長を続けるタブレットPC市場だが、タブレット人気に火付け役でもあるアップル社の勢いに陰りが見え始めているようだ。IDCの調査によると、2012年第4四半期(10月?12月)の世界のタブレット市場は、前年同期比75.3%増で過去最高の台数となる5250万台だったが、同じくIDCが算出したタブレットPCの市場予測をOS別で見ていくと、2012年は53.8%でシェアトップを誇るiPadなどの「iOS」が2016年にはトップをキープするものの、そのシェアは49.7%と若干下がると予想しており、同様に「Android」も42.7%から39.7%に下がるとしている。逆に、2012年のシェアでは2.9%と上位2種のOSに大きく引き離されている「Windows」が2016年には10.3%と大きな増加率で数字を伸ばすとしているのだ。「RT」などのタブレットに適したOSの登場なども寄与していると予想されており、タブレット分野で遅れをとっていたマイクロソフトの逆襲が始まりそうな気配も出てきた。
「iPhone」や「iPad」の好調な売れ行きの追い風に乗り、ここ数年は好調な推移をみせていた国内に電子部品業界だが、ここにきて急速な勢いで上り詰めた絶対王者アップルの思わぬ失速に、アップル一社に依存してきた一部の国内電子部品業者は影響を受け始めているようだ。しかし、そんな中でも、たくましく「脱メーカー依存」を唱え始めた電子部品メーカーも登場している。京都に本社を置く電子部品大手にローム<6963>は、米国インテル社とのタブレット向け次世代Atomプロセッサ「Bay Trail」を用いたシステムを構成するのに最適な専用パワーマネジメントICの共同開発を先日発表した。この「Bay Trail」は、タブレット市場において最も低消費で高いパフォーマンスを提供するプロセッサとして期待されており、業界をリードする電力変換効率を備え、最適化したロームのパワーマネジメントソリューションと組み合わせることにより消費電力は大幅に低減されるという。
インテル社と言えば、高品質・高性能のPC用CPUをはじめとする世界最大手の半導体メーカーで、最近では軽量・薄型PCの世界標準カテゴリーとして「ウルトラブック」の提唱をしたことでも、その影響力は強大だ。今回、アナログ回路技術に定評のあるロームの最適化したパワーマネジメントソリューションと組み合わせることにより、超薄型タブレットやタブレット可変型のウルトラブックの長時間駆動を実現することになりそうだ。
まだまだ大きな潜在能力を秘めているタブレット市場は、国内の部品メーカーにとっても最重視すべき巨大なフィールドだ。高い技術を持った半導体メーカー同士が手を組んだこのような動きは、大手PCメーカーの動向に左右されない “部品が主役”という流れを作り、電子部品メーカーの底力を世界に見せつける大きなきっかけになると同時に、競争が激化するPC・タブレット・スマートフォンの世界市場において未来を模索している国内電子部品業界に対し、新たな方向性を示す道しるべとなるかもしれない。(編集担当:北尾準)