シャープ<6753>が、サムスン電子の日本法人であるサムスン電子ジャパンを割当先とした第三者割当による新株式の発行を行うと発表。サムスン電子ジャパンによる出資額は約103億8300万円で、支払期日である平成25年3月28日までに出資が履行されれば、議決権ベースで3.08%を有する大株主となる。
平成25年3月期第3四半期連結会計期間では、営業利益が5四半期ぶりに黒字転換していたシャープ。しかし、平成24年12月末現在の自己資本比率は9.6%にまで低下、ホンハイとの交渉も暗礁に乗り上げたままとなっている。そこで同社は、昨年末にサムスン電子と業務提携。液晶パネルを長期的かつ安定的に供給するとしていた。今回の第三者割当は、この関係をより強化するもの。約3580万株を1株につき290円にて発行し、103億8316万円を調達する。これにより、日本生命保険、明治安田生命、みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行に次ぐ大株主となる。調達する資金の具体的にな使途は、液晶ディスプレイの高精細化のための新規技術導入に69億円、タブレット端末や高精細ノートパソコンといったモバイル機器関連の液晶製造設備の合理化等に係る投資等に32億3400万円が予定されている。
世界シェア1位の液晶テレビ向けに液晶パネルを供給できることは確かに業績に安定につながるかもしれない。しかし、IGZOなどのシャープ独自技術が再建の要としての役割を果たせなくなる可能性や大口顧客であるアップルとの関係など、懸念材料は少なくない。特にiPhone5の需要が思うように伸びなかった一方で、サムスンとアップルとの間には世界中で提起されている特許訴訟があることなどを考えると、アップルとの関係が悪化することは想像に難くない。サムスンの台頭は、日本の電機産業衰退の要因の一つといえる。このサムスンに対抗すべく日本企業は技術を磨いてきたのではなかったか。昨年末の業務提携という前フリがあったとはいえ意外な展開であり、今後の動向に注目が集まるところである。(編集担当:井畑学)