企業の経営判断や事業方針を協議する会議室のイメージ。日本銀行が2026年10月に公表した日銀レビューでは、企業の決算説明会の発言を分析し、政策の先行き不透明感が設備投資や雇用に及ぼす影響を検証した。(資料画像)
今回のニュースのポイント
日本銀行が2026年10月に公表した日銀レビューでは、日本企業の決算説明会テキストを分析し、新たな経済政策不確実性指数「企業EPU」を作成しました。2007年以降のデータを基にした時系列モデルの分析から、政策の先行き不透明感が高まると、企業は設備投資や雇用者数を減少させる傾向が確認されました。新聞記事や市場の指標を考慮してもこの関係は残り、決算説明会での企業の発言が景気分析の追加的な情報源になる可能性が示されています。
本文
日本銀行が2026年10月に公表した日銀レビュー「企業の決算説明会テキストを用いた経済政策不確実性の考察」(2026-J-14)では、企業が語る言葉から政策の先行き不透明感を指数化し、マクロ経済への影響を検証した分析結果が示されました。企業EPUを用いた時系列モデルの分析では、政策不確実性が高まるショックの後、設備投資や雇用者数が時間差を伴って減少するとの推計結果が示されました。
研究チームは、LSEG社が提供する日本企業の決算説明会テキストデータを活用し、2007年第1四半期以降の約20年分を分析しました。四半期ごとに約100〜150件利用可能なテキストから、業績説明や質疑応答に含まれる経済・政策・不確実性に関する英語キーワードを抽出。「不確実性」に言及した文とその前後3文の文脈を判定し、業種別のウエイトを調整したうえで、新たな指数「企業EPU(企業決算説明会ベースの経済政策不確実性指数)」を構築しました。
従来、政策不確実性の把握には、新聞記事のテキストから作成する「メディアEPU」や、株式市場の価格変動に基づくボラティリティ指数(VI)などが用いられてきました。企業EPUはこれら既存指標とおおむね類似した動きを見せるものの、特定の局面では異なる反応を示しました。例えば、2025年4月に米国が関税引き上げ方針を公表した際、メディアEPUが大きく上昇したのに対し、企業EPUの上昇幅は相対的に抑制されました。研究では、関税の影響が米国向け輸出依存度の高い一部産業に集中していたため、幅広い業種を含む企業EPUではマイナス影響が小さく表れた可能性が挙げられています。
さらに、企業EPU、TOPIX、貸出金利、雇用者数、設備投資、鉱工業生産の6変数を用いたベクトル自己回帰(VAR)モデルによる分析では、企業EPUが1標準偏差上昇するショックが生じた場合、設備投資は数四半期かけて有意に減少し、雇用者数も時間差を伴って持続的に減少する傾向が示されました。この傾向は、メディアEPUやVIの影響を統計的にコントロールした場合でも変わらず確認されています。政策の先行きが見通しにくくなると、企業は後から容易に取り消せない設備投資や採用といった意思決定を先送りする姿勢を強めることがうかがえます。
今回の研究結果は、企業の決算説明会における発言データが、新聞や金融市場のデータとは異なる固有の情報を備えており、企業の投資や雇用行動の変化を説明する材料になり得ることを示しています。研究では、メディアEPUやVIにも企業活動を説明する情報があることを確認しており、企業EPUは既存指標に代わるものではなく、補完的な情報を提供する可能性があると位置付けています。なお、本レビューで示された見解は執筆者個人に帰属するものであり、日本銀行の公式な見解や今後の金融政策・経済見通しを示すものではありません。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













