企業の資金需要DIがプラス転換 日銀10月調査、銀行の貸出利鞘は拡大傾向

2026年10月22日 10:56

日銀6

日本銀行本店の外観。日銀が2026年10月22日に公表した「主要銀行貸出動向アンケート調査」では、企業向け資金需要判断DIが前回のマイナス1からプラス3に改善した。一方、銀行の貸出運営スタンスはおおむね不変で、貸出利鞘は拡大方向の回答が優勢となった。(資料画像)

今回のニュースのポイント

日本銀行が2026年10月22日に公表した「主要銀行貸出動向アンケート調査(10月)」によると、過去3カ月の企業向け資金需要判断DIはマイナス1からプラス3へ改善しプラス圏に転じました。大企業向けがプラス5、建設・不動産の大企業向けがプラス14と需要判断を牽引し、今後3カ月の企業向け見通しもプラス6となりました。銀行の貸出運営スタンスはおおむね不変の一方、格付別の貸出利鞘設定DIはプラス10~12と利鞘拡大方向の回答が優勢となっています。本調査は主要50行庫の回答を集計した判断指標です。

本文
 日本銀行金融機構局は2026年10月22日午前8時50分、「主要銀行貸出動向アンケート調査(2026年10月)」を公表しました。調査は2026年9月9日から10月13日にかけて、国内銀行および信用金庫のうち貸出残高上位50行庫(全体貸出残高の約8割のシェア)を対象に実施されたものです。過去3カ月間(7~9月頃)における企業向けの資金需要判断DIはプラス3となり、前回7月調査のマイナス1から4ポイント改善してプラス圏へ浮上しました。また、今後3カ月間の企業向け資金需要見通しDIもプラス6(前回プラス4)へ上昇しています。

 ただし、今回の企業向け資金需要の変化に対する50行庫の回答内訳を見ると、「増加」が0行庫(0%)、「やや増加」が5行庫(10%)、「横這い」が43行庫(86%)、「やや減少」が2行庫(4%)、「減少」が0行庫(0%)となっています。回答金融機関の8割以上が「横這い」と判断しており、今回のDI改善は借り入れの急増を示すものではなく、全般的な資金需要の底堅さや一部での持ち直し傾向を映じたものと言えます。

 企業規模別の資金需要判断DIを見ると、大企業向けがプラス5(前回プラス2)、中堅企業向けがプラス1(前回マイナス2)、中小企業向けがプラス1(前回マイナス2)となりました。すべての規模でプラスとなり、中堅・中小企業向けはマイナス圏からプラス圏に転じました。特に大企業向けの資金需要判断が相対的に強い傾向を示しています。

 業種別では、非製造業の建設・不動産分野における需要判断の強さが目立っています。建設・不動産の大企業向け資金需要判断DIはプラス14(前回プラス1)へ大幅に上昇し、中堅企業向けもプラス8(前回マイナス10)、中小企業向けもプラス7(前回マイナス3)と揃ってプラスへ転じました。一方、製造業の大企業向けはプラス7(前回プラス1)、中堅企業向けは0(前回プラス7)、中小企業向けはプラス3(前回マイナス2)となっており、業種や規模によって需要感にバラつきが見られます。

 企業向け資金需要が増加した要因(質問3.a.)としては、加重平均値の比較において「設備投資の拡大」の重要度が高く評価されています(大企業向け平均2.20、中堅企業向け2.25、中小企業向け2.00)。ただし、この要因質問に回答した金融機関自体は、大企業向けで5行庫、中堅向けで4行庫、中小向けで3行庫と限定的です。資金需要が増加したと回答した一部の金融機関において、設備投資に伴う資金ニーズが挙げられた形です。

 個人向けの資金需要判断DIは、個人向け全体でプラス5(前回プラス3)となりました。内訳では、住宅ローンがプラス4(前回プラス1)、消費者ローンがプラス4(前回プラス1)と、ともにプラス圏での推移が続いています。ただし、今後3カ月の個人向け資金需要の見通しDIは0(前回プラス1)となっており、足元の需要判断と比べて先行きは横ばいを見込む回答が主流を占めています。

 金融機関側の貸出姿勢を示す過去3カ月の貸出運営スタンスDIは、大企業向けが0(前回プラス1)、中堅企業向けがプラス2(前回プラス3)、中小企業向けがプラス3(前回プラス5)となりました。回答割合を見ると、大企業向けで46行庫(92%)、中堅・中小企業向けでそれぞれ48行庫(96%)が「ほぼ不変」と回答しており、企業の資金需要判断が改善する一方で、銀行側が貸出姿勢を極端に積極化または慎重化させているわけではありません。

 一方で、貸出の対価に関する「貸出利鞘」設定には拡大方向の動きが見られます。過去3カ月の格付別利鞘設定DI(「拡大」の割合から「縮小」の割合を引いた指標)は、上位格付先がプラス12(前回プラス12)、中位格付先がプラス10(前回プラス10)、下位格付先がプラス10(前回プラス12)となりました。さらに今後3カ月の見通しでは、上位・中位・下位のすべての格付で利鞘設定DIがプラス12となっています。

 なお、企業規模別の貸出条件設定DI(「緩和」から「厳格化」を引いた指標)における利鞘設定は、大企業・中堅企業・中小企業向けがいずれもマイナス7となっておりますが、これは「利鞘縮小(緩和)」をプラスとする指標定義によるものであり、利鞘が拡大方向にあるという格付別DIの回答結果と整合しています。

 今後の焦点は、先行き見通しDIがプラス6を示す企業の資金需要が実際にどの程度具現化するか、そして全格付でプラス12と見込まれる金融機関の利鞘拡大方針が実際の貸出金利や企業金融環境にどのように作用していくかという点に移ります。企業の資金ニーズの持ち直しと、貸出姿勢をおおむね不変としつつ利鞘改善を進める銀行側の姿勢が対照的な構造を示しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)