ステランティス、世界63工場の課題にAI・ロボット技術 280社超が提案、生産改革を加速

2026年10月23日 10:21

自動車製造イメージ

自動車工場の車体組み立てライン。ステランティスは世界63工場の改善課題に対し、外部企業280社超からAIやロボットなどの技術提案を集めた。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

欧州自動車大手のStellantis(ステランティス)は10月22日、世界各国の製造拠点が抱える課題と外部企業の先進技術を接続する年次イベント「Factory Booster Day 2026」の概要を発表しました。世界63工場から提示された現場の改善課題に対し、サプライヤーやスタートアップ280社超がAIやロボット技術などを提案し、80社超がイベント向けに選定されました。現場発の課題解決と外部イノベーションの迅速な導入を通じ、グローバルでの生産効率と競争力の向上を図ります。

本文
 欧州自動車大手のStellantis(ステランティス)は2026年10月22日、自社のグローバルな製造ネットワークにおける生産効率や品質の向上を目指し、前日10月21日に開催した年次オープンイノベーションイベント「Factory Booster Day 2026」の成果を発表しました。同イベントでは、世界63の製造工場から寄せられた現場の課題に対し、外部のサプライヤーやスタートアップ企業280社超から技術ソリューションの提案が集まり、その中から80社超が選定されました。

 「Factory Booster Day」は、Stellantisが2016年に開始した取り組みで、単なる技術展示会とは異なり、製造現場が直接直面している具体的な運用上の課題を起点とする点が特徴です。各工場から提出された課題を外部の技術企業に開示し、解決策をオープンに募ることで、社内の研究開発だけに依存せず、現場に即した有効な外部技術を迅速に発掘・評価して実証実験へ繋げるオープンイノベーションの仕組みを構築しています。

 今回のイベントで対象となった主要な技術領域は、人工知能(AI)、自動化、先進ロボット工学、画像認識システム、エネルギー管理システム、デジタル製造技術など多岐にわたります。これらの技術は、製造工程の安定化や品質管理、作業効率の改善、エネルギー管理など、自動車製造現場が抱える多様な課題への対応を目的としています。

 発表では、過去の同イベントを通じて採用・導入された具体的な事例も紹介されています。米国のスターリング(Sterling)プレス工場では、技術企業ThinkDigitsのAI技術を導入し、プレス加工時の鋼板の引き込み状態をリアルタイムで監視するシステムを構築しました。Stellantisによると、この技術による年間の削減効果は、初期投資額の約4倍に迫る水準に達しています。

 また、品質管理や従業員教育の分野でも成果が現れています。スペインのサラゴサ(Zaragoza)工場では、光学機器大手ZEISS(ツァイス)の技術により、専用の検査治具を使用しない寸法測定技術を導入した事例が紹介されています。さらにフランスのソショー(Sochaux)工場では、没入型デジタル研修や工場のバーチャル見学にUptaleの技術を活用しています。

 自動車メーカーが自社単独で急速に進化するデジタル・エネルギー技術のすべてを追従することは容易ではありません。280社超の企業から提案を集め、80社超をイベント向けに選定する仕組みは、外部技術を評価し、各工場への導入可能性を検討する機会となっています。ただし、提案や選定の段階と全工場への本格導入は異なるプロセスであり、実際の導入件数や費用対効果の検証が今後の鍵となります。

 Factory Booster Day 2026の取り組みは、製造業におけるスマートファクトリー化の要が、新技術の導入そのものだけでなく「いかに現場の具体的な課題と外部の技術を結び付け、検証と導入を迅速に行うか」にあることを示しています。自動車業界でコスト削減と品質向上、脱炭素化の要請が同時に強まる中、現場課題を起点としたオープンイノベーションの運用能力が、グローバルな製造競争力を左右する重要な要素となっています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)