今週の振り返り 狼狽して凹んでも立ち直りは早かったけれど

2013年03月23日 20:28

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18日に突然、わが日本の株式市場をひっかき回したキプロスもまた島国。

 来週の展望 株価に一番良くないのはキプロス問題の結論先延ばし

 3月は30日、31日が土曜、日曜なので、株式市場は来週が3月の最終週になる。年度末、決算期末で株式市場も何かとあわただしい週になる。

 来週の経済指標は、海外では25日にアメリカの2月のシカゴ連銀全米活動指数、26日にアメリカの2月の耐久財受注、1月のS&Pケース・シラー住宅価格指数、2月の新築住宅販売件数、3月のCB消費者信頼感指数、3月のリッチモンド連銀製造業指数、27日にアメリカの2月の中古住宅販売保留指数、ユーロ圏の3月の消費者物価指数、3月の消費者信頼感指数、3月の業況判断指数、28日にアメリカの10~12月のGDP、GDP価格指数、個人消費、コアPCEの確報値、3月のシカゴ購買部協会景気指数、ユーロ圏の2月のマネーサプライ、29日にアメリカの2月の個人所得、個人支出、PCEコア・デフレータ、3月のミシガン大学消費者信頼感指数が、それぞれ発表される。

 バーナンキFRB議長は25日に公開パネルディスカッションに出席する予定で、発言が注目されそうだ。26~27日は南アフリカのダーバンに5大新興国の首脳が集まって「BRICSサミット」が開催され、外貨準備の共同構築、インフラプロジェクトを支援する開発銀行の創設などを承認する見通し。なお、今年は3月31日がイースター(復活祭)にあたり、29日はキリストの受難を記念するグッドフライデー(聖金曜日)で、アメリカ、ヨーロッパ、中南米などのキリスト教国や香港では株式市場が休場になる。そのため3月の最終取引日は28日になる。

 国内では25日に2月の外食産業売上高、26日に2月の企業向けサービス価格指数、28日に2月の小売業販売額、2月の大型小売店既存店販売額、3月上旬の貿易統計の発表がある。重要なのは29日の金曜日で、取引開始前に2月の失業率と有効求人倍率、2月の全国消費者物価指数(CPI)、2月の鉱工業生産指数、2月の家計調査がまとめて発表される。午後2時には2月の新設住宅着工戸数も出る。日銀の定例の金融政策決定会合は来々週の4月3~4日だが、黒田総裁が来週中に臨時に会合を開くかもしれない。

 3月期決算の上場企業の大部分は、26日の火曜日が株主名簿に載るための権利付き最終日、27日の水曜日が権利落ちの日、29日が期末の最終取引日になる。権利付き最終日に現物と一般信用取引の売建を両建てして株主優待を受ける権利を確保し、一夜明けた権利落ちの日に一般信用を現渡し決済して株価変動、逆日歩高騰のリスクを回避するという権利取りのテクニックが昨年、一部の証券会社で登場したが、今年は個人の株式市場への関心が昨年とは比較にならないほどふくらみ、信用取引も規制緩和で身近になっている。そんなテクニックも盛んに使われて26日の現物の株価上昇、27日の株価下落に拍車をかけるかもしれない。今やマネー誌だけでなく女性誌まで特集する株主優待取りのターゲット、航空、鉄道、小売、外食、レジャー関連などの業種の銘柄は26日までにどれぐらい上昇するだろうか。それに加えて、記念配当や増配見込みの銘柄や配当利回りのいい銘柄も配当取り狙いで買われそうだ。

 さて、その翌日27日の権利落ちの日に東証1部に直接上場するのがタマホーム で、売上高1696億円の非分譲系・格安注文住宅建築の「遅れてきた大物パワービルダー」だ。同業では11月に経営統合する一(はじめ)建設 など通称「飯田グループ」6社が3月13日、一斉に買われてお祭り騒ぎになったのが記憶に新しいだけに、タマホームは要チェックの新規上場銘柄だろう。このところ15日上場の鴻池運輸 、22日上場のブロードリーフ など、いきなり1軍(1部)昇格のルーキーの大活躍が目立っているので、なお期待できる。

 3月末は毎年、投資信託の新規設定が多くなる時期。日経平均に連動するETFが1本あるが、2月末に設定された野村アセットマネジメントの2本よりもスケールは小型で市場へのインパクトは大きくないと思われる。むしろ最近の不動産人気を反映して、新規設定の国内REITのほうが投資家の人気を集めそうだ。というわけで、来週は含み資産銘柄だけでなく住宅、不動産、建設関係がひろく買われて株価を下支えしそうな要素をはらんでいる。

 今週、突然のように株式市場をひっかき回したキプロス問題ははっきり言って市場の過剰反応だった。そのキプロスのサッカーチームAPOELは昨年、奇跡の快進撃でUEFAチャンピオンズリーグのベスト8まで勝ち進んで世界的強豪のレアル・マドリードに敗退したが、今の日本の市場心理は、その時のレアルのサポーターの一部が「もしかしたらレアルがAPOELに負けてしまうかもしれない」と根拠もなく怖がっているようなもの。だが、キプロスの経済には、FCバルセロナ級の多大な影響力などありはしない。

 キプロスと日本ではGDPが267倍と、経済のスケールがネズミと象ぐらい違う。万が一、ECBやEUがこの国を見殺しにしてユーロ圏を離脱させても世界経済への影響は軽微ですみ、誰かが最悪のシナリオとして恐れているギリシャやイタリアやスペインへの連鎖反応など、まず起こらないだろう。その意味では今週末の日経平均12338円という水準はいくら何でも下がり過ぎで、たとえどんな結果になろうとも「キプロス問題は決着をみた」というだけで来週の反発は必至。株価にとって一番良くないのは、ECBがデッドラインに設定した25日を過ぎても事態が混迷したまま問題の決着がズルズル先延ばしになることで、そうならない限り、日経平均は急回復することだろう。

 日経平均の前日終値が11153円だった2月9日に甘利大臣が発言した「3月末で13000円」も、来週は26日の権利付き最終日までは配当取りや株主優待の権利取りで買われ、27日の権利落ち日の後には今度は決算期末のドレッシング買いが入ると予想されるので、13000円の大台の達成も決して絵空事ではない。決算対策売りは完全に終了し、キプロス問題の結論先延ばしと27日の権利落ち以外にさほど大きな下落要因は見当たらないので、来週の日経平均のレンジは12400円~13000円とみる。(編集担当:寺尾淳)