【日経平均】キプロス・ショック第二波が来て297円安

2013年03月22日 20:06

 NYダウは90ドル安。ECB(欧州中央銀行)がキプロスの銀行への緊急流動性供給について「25日まで」と期限を通告し、緊張が高まったのが下落要因。この島国は租税回避地としてあらゆる国よりカネこそ通えど、いまだに銀行が営業を再開できないでいる。22日朝方の為替レートは、ドル円は95円近辺、ユーロ円はキプロス問題緊迫化に加え3月のユーロ圏の購買担当者景気指数(PMI)総合指数の速報値が低下したこともあって122円台前半。円安が大幅に進み、前日発表の公示地価は1月1日時点ではまだ全国的な反転まではいかず、前夜の黒田新日銀総裁の記者会見では特にサプライズもなくて、日経平均は137.18円安の12498.51円で始まった。

 12500円台にもタッチしながら、定着できず12400円台で徐々に下げていく軟調な展開。債券市場では、日銀新体制の量的緩和による買入増期待にキプロス問題によるリスク・オフが重なって朝から日本国債が活発に買われ、長期金利が9年9ヵ月ぶりの低水準まで低下したことも無関係ではない。弱い相場は後場も続き、午後2時台には当てにしていたロシアが助けてくれずキプロスの財務大臣が失意の帰国とか、救済する銀行を選別して支援を仰ぐといったニュースが伝えられて円高がさらに進行したため、急落して12400円を割り込み以前の「利益確定売りの金曜日」が復活。結局、日経平均は297.16円安の12338.53円の安値引けと、18日の340円安に近い下落幅になった。投資家の心理は「週末にキプロスがらみで何かあるかもしれない」という懸念で積極的に買いに行けなかったようだ。TOPIXは-19.53の1038.57。売買代金は2兆円を超えても売買高は28億株と控えめで、日本人にはなじみが薄い地中海の島国に最後まで振り回され、久々の前週末比マイナスを記録して今週の取引を終えた。

 東証1部全体の81.8%の銘柄が下落しては東証33業種別騰落率が全業種マイナスでも仕方ない。マイナスが軽かったのは空運、電気・ガス、情報・通信、卸売、水産・農林業など内需系中心。マイナスが重かったのはゴム製品、鉄鋼、倉庫、その他金融、精密機器、電気機器、輸送用機器などだった。

 終値のTOPIXの下げ幅はまだ小さかったが、ファーストリテイリング<9983>が1370円の4ケタ安、ファナック<6954>が850円安、ソフトバンク<9984>が90円安で、「寄与度御三家」3銘柄に99円も押し下げられては、日経平均大幅安も納得か。

 主力株は金融も自動車も電機も総崩れで、下落が目立ったのが110円安のトヨタ<7203>や30円安のソニー<6758>で、前日のヒーローのオリコ<8585>もアイフル<8515>も下落した。上昇は中国関連のコマツ<6301>の30円高が目立つぐらいだったが、そんな中で東証1部に直接新規上場したブロードリーフ<3673>は1200円の初値をつけた後に一時ストップ高で1500円の制限値幅まで買われ、終値は1480円で公開価格に対し400円高、売買代金6位に入るという「驚異の新人」ぶりを見せた。

 リアルとバーチャルの接点に立つような話題を材料に買われていたのがこの日の特徴。飲食店をネットでガイドする「食べログ」が好調で来期は売上5割増の模様と報じられたカカクコム<2371>は140円高と買われ昨年来高値更新。アマゾンドットコムとマイレージで提携と報じられたJAL<9201>は10円高で昨年来高値を更新した。カードゲームをバンダイと共同開発すると報じられたグリー<3632>は26円高。相手のバンダイナムコHD<7832>は17円安だったが、グリーのライバルのDeNA<2432>は121円高で売買代金9位と気を吐いていた。

 アメリカからインテルの目標株価を引き下げというニュースが入り、ハイテク銘柄に負の影響をもたらした。東京エレクトロン<8035>は105円安、京セラ<6971>は150円安、アドバンテスト<6857>は39円安と揃って下落した。「2020年にドイツのギルデマイスター社との合併を目指す」という森雅彦社長の発言が新聞に載った森精機<6141>は前場に買われて昨年来高値を更新したが、結局3円安で終わっている。自動車関連では3月はずっと好調だったブリヂストン<5108>が105円安、ホンダ<7267>も100円の大幅安になった。不動産は三井不動産<8801>が9円安、三菱地所<8802>が38円安でどちらも今週下げっぱなし。含み資産銘柄の東京ドーム<9681>は44円安で値下がり率8位になり、東京都競馬<9672>も26円安で続落した。

 この日の主役は「小売」セクター。為替が円高に振れると株価が上がる内需ディフェンシブ系の代表格だが、中でも不動産含み資産関連であり、株高の恩恵を受ける高級品消費関連であり、円安の追い風を受けて復活しつつある外国人観光客のお買物ツアーの受け入れ先でもあり、ということで連日買われているのが百貨店。三越伊勢丹HD<3099>は8円高、Jフロントリテイリング<3086>は10円高、高島屋<8233>は13円高、丸井G<8252>は9円高で、いずれも昨年来高値を更新した。百貨店とは対極にあるような100円ショップも日経新聞朝刊で「都心商業施設の目玉に。『安いだけ』脱却。高級感出す」という見出しの特集記事が載り、セリア<2782>が95円高で昨年来高値を更新。キャンドゥ<2698>は200円安だが大引け直前まではプラスで、ワッツ<2735>は4円高だった。新業態「ピカソ」で高級感を出しているディスカウンターのドン・キホーテ<7532>も株価を上げて年初来高値を更新したが終値は値動きなし。小売の他分野では、イオン<8267>は6円高で昨年来高値を更新したが、2月期決算で営業利益が最高益を更新し、今期はさらに利益幅が拡大と報じられながらセブン&アイHD<3382>は123円安と値を崩した。ファーストリテイリングが4ケタ安でも、同じファッション小売の分野でコナカ<7494>が28円高、ポイント<2685>が70円高で昨年来高値更新と、しっかり買われている銘柄もある。小売セクターには2月期決算企業が少なくないので、4月に入れば決算内容を好感した買いが入るだろうか。(編集担当:寺尾淳)