2010年の後半になって、ヤマハ発動機<7272> ・ホンダ<7267> という2大二輪メーカーの参入でにわかに活況づいてきた電動バイク市場。年が変わり、今年2011年は、その勢いに拍車がかかり、本格的な普及へと繋がるかが注目されている。
2007年から参入するベンチャー企業が除々に増えだし、現在10社以上の企業が電動バイクを販売している。国内オリジナルから輸入販売まで様々だが、小規模ではあるが、確実に市場形成の基盤は作れたと思われる。そこに大手メーカーが本腰を入れ、参入してきたことで一気に普及の可能性は高まってきた。
各メーカーの取り組み状況を見てみると、ベンチャー企業では、カラーバリエーションが豊富なペダル付き「ミレット」(13万8000円※充電器別売り)など3シリーズを販売するプロスタッフや、コストパフォーマンスに優れた「SEED(シード)」などを販売するテラモーターズを代表に数社がしのぎを削る。一方、大手メーカーでは、昨年10月から全国1500店舗以上のバイクショップで販売をスタートさせたヤマハ発動機の「EC-03」が好調のようだ。長年、電気動力製品に携わった経験は信頼度も高く、そして「EC-03」のコンパクトに設計されたスリムなボディは、軽量で扱いやすく、集合住宅のエレベーターにも載せられるサイズとなっている。ヤマハに続いて、昨年12月には、ホンダがビジネスユースとして「EV-neo」のリース販売を開始し、市場拡大を狙っている。スズキは<7269> 製品化を進めてはいるものの、まだ参入には至っておらず、少し出遅れた感は否めない。
市場拡大には大手メーカーの生産能力の高さと、販売ネットワークの広さが不可欠だが、先行した形となったヤマハ「EC-03」を例に上げると、市場の今後が見えてくる。大手の持つブランドイメージは既に消費者には浸透した状態から始まる優位さを持っているし、また従来ガソリン車を販売していたディーラーなどの販売店というネットワークを最初から有している点も強い。さらに、ヤマハは一歩先に市場に投入している分、それだけユーザーに対する浸透力も普及期には有利だ。しかし、普及するにはガソリン車に比べ価格が高く、走行性能に劣る電動バイクの懸念する点も抱える。ベンチャー企業が用意する安価モデルも存在しており、販売ネットワークもガソリン車では考えられなかった家電量販店やホームセンター、ネット販売などの販路を開拓するなどの動きを見せている。
また、今後に向けての新たな市場拡大への動きも活発になってきているようだ。ヤマハ発動機では、社会・行政と組む事で新しいスタイルの普及活動を積極的に推進している。既にプロジェクトとして数件を成功させているが、大阪府では、「大阪EVアクションプログラム」というエコプロジェクトの一環として、2010年12月から2011年3月まで「事業用EVバイク普及モニタープロジェクト」という、事業用EVバイクの市場調査やEVバイクの認知拡大・普及に向けた活動を行っている。このプロジェクト用に開発した事業用EVバイクをモニターした事業者の感想として、「思っていたより力強く、坂道も問題ない」「排出ガスが出ず、環境に配慮している実感がある」「ガソリンスタンドへ給油しにいく必要がなく便利」といったメリットを上がる一方で、「1回の充電で45kmという走行距離が短い、50km以上は欲しい」「料金が高い(ただ、維持費や修理代を考えると実用としても十分いける)」という要望も上げられている。
電動バイク元年となった2010年だが、2011年がその飛躍の年になるかどうかは、大手メーカーの牽引力とインフラ整備などが上手く絡み合い共存していくことと、従来の常識に囚われない普及プロジェクトの導入などにかかっている。