視線の矛先で、自販機の売上アップ

2013年04月18日 08:17

 アイトラッキングという言葉をご存知だろうか。これは、人の視線の動きを捉え、どこをどのように見ているかを知る技術。発達心理学をはじめとする学術研究で多く使用されてきたが、ここ数年は消費者の行動を読み解く手法として注目されており、マーケティングリサーチとして活発に利用、様々なマスメディアで取り上げられている。使用用途としてはテレビコマーシャルの調査や商品パッケージのデザイン評価や広告効果測定、ウェブサイトやスマートフォンなどのユーザビリティ調査などがある。

 このアイトラッキング機器で、世界シェアの50%超えているのがスウェーデン製の「トビー・テクノロジー」だ。国内では現在、この技術を採用した広告展開を行っている企業や大学、研究所が500社を超えると言われている。また、このアイトラッキングの技術と脳波の動きを融合させることで人の感情をも把握していく、という試みまでトビーでは開始されているという。

 例えば、売上の90%が自販機だという飲料大手のダイドードリンコ<2590>は、アイトラッキングマーケティングを活用し、2012年1月より自販機の商品配置や缶のデザインなどに採り入れている。これまで基本的に流通業界では、消費者の視線は左から右、上段から下段へ移るため、商品棚の最重要位置は左上というのが普遍的な常識であった。しかしアイトラッキングにより視線分析を行ったところ、自販機に関しては並んだ商品の左下隅に視線が集中することが判明。そこで同社は2012年秋より、主力のコーヒー類を左下隅に配置したところ、売上が前年比30%増となったという。成熟市場であるコーヒーカテゴリーで30%増という数字は驚異的である。また好感度の高い缶のデザインが何かを分析することで、効果的な製品づくりにも役立っているようだ。

 長引く不況により消費者マインドの低迷が続いている。そのような中、各企業はいかに効率よく、自社の売上効果につながる製品やサービスを作り出せるのかを、様々な調査方法により模索している。今後もこのアイトラッキングマーケティングを駆使し、事業展開を行う企業が増加すると考えられる。どの企業がどの部分にこの技術を用いるのか、楽しみなところである。(編集担当:宮園奈美)