本当の意味での、「コストパフォーマンスに優れた住まい」とは何だろうか。
「日本の住宅は平均寿命が短い」。30年と言われるその平均寿命は欧米の先進諸国に比べてとりわけ短い。これには様々な理由が挙げられているが、高度経済成長時に“質より量”の考え先行で大量に作られた住宅の影響、現在の国民性で“住み継ぐ”という意識が薄い、土地担保主義の影響、など他にも色々ありそうだ。だが、技術力の高い日本の住宅そのものはハードとして本当に30年で建替えなければならないのだろうか。
現在、その良さが見直されてきた「木造軸組工法」で建てられた住宅は、100年以上の耐久性があり、実際、引っ張りや曲げに対する強度はコンクリートより強いとされている。そう考えると、日本の住宅の平均寿命が短いのは、大量生産で供給されてきた時代の住宅は仕方ないのかもしれないが、ライフスタイルの変化に伴う住まい手の考え方や、中古住宅に馴染みのない国民性などの方が、影響しているのかもしれない。
しかし、その考え方も「200年住宅」構想から始まった「長く住み継ぐ家」を普及する国の方針から生まれた「長期優良住宅」や、東日本大震災で国民が真剣に考え始めた「エネルギー問題」を解決する有効な手段としてスマートハウスが脚光を浴びたことで、根本から変化をする可能性も出てきている。
だが、そのタイプの住宅が普及するにはコストや認定されるためのハードルが高く、まだまだ時間がかかりそうだ。普及を加速させるための「認定低炭素住宅」制度も開始したばかりで、取り組む中・小のハウスメーカーや地方工務店も少ない状況だ。
ここでよく考えてみたいのだが、住まいを購入する際に第一に考える時、一部の高額所得者を除き、価格が大半を占めるということだ。一生に一度の大きい買い物と言っても過言ではない“マイホーム”。高い・安いという比較が何百万、何千万円という単位になるのだから、「安くて質の良い住宅」を求めるのは当たり前だ。前述の「長期優良住宅」や「スマートハウス」はもちろん質は高いのかもしれないが、安いとは言い難い。
5年に一度、国土交通省が行っている「住生活総合調査」でも平成20年に行われたものでは、新築の購入金額は全国平均で3493.7万円と、中古住宅では2375.5万円となっており、現在の住宅価格は決して安くないのだ。
では、1000万円台で購入できる話題の低価格住宅を供給する中堅の住宅メーカーの商品はどうだろう。LIXILグループ<5938>のアイフルホームはネット限定の700万円台から購入できる「i-Prime7」という省エネハウスを販売して話題となっている。1000万円台で購入できるスマートハウス「ひふみ」など低価格住宅を数多く販売しているアキュラホームも、買いやすい高品質住宅を市場に投入している。これらの低価格住宅を商品化するメーカーたちは資材の一括購入、工期短縮、宣伝費をかけないなどにより、コストを抑えることを実現している。
日本の住宅も低価格化が進み、同時に高品質化も実現させているものも増えてきたと言えるかもしれない。しかし、前述のアキュラホームの社長である宮沢俊哉氏は自著『安くていい家のつくりかた』の中で、「住まいは建てられたら終わりではない」と語っているように、長く住み継ぐ家として、もちろんオーナー自身が定期的にメンテナンスをする必要はあるが、その生活スタイルや家族構成の変化によって、リフォームが低価格で容易に実現できる所までを考えた住まいこそが、本当にコストパフォーマンスに優れた住宅と言えるのではないだろうか。(編集担当:滝浦巧都)