アベノミクス効果で、不動産が順調な売れ行きを見せている。とくに「スマートハウス」の売れ行きが好調だ。
スマートハウスとは、高効率な給湯器や太陽光発電システム、蓄電池やLED照明などの省エネ、創エネ、蓄エネ設備を住宅に備え、これらを住宅用エネルギー管理システム「HEMS」で連携させて自動制御を行い、さらに消費電力を「見える化」することで、従来よりも少ないエネルギー使用量で最適化する住宅のことだ。2011年の東日本大震災以降、電力危機意識の高まりや災害に対応する機能に対する需要が増えたことを受け、大手ハウスメーカーを中心に商品化が進んでいる。震災以前、スマートハウスの認知度は41.1%程度だったが、震災以降は87.3%まで上昇。アベノミクス効果による不動産マーケットの活況も追い風となり、2020年度には1兆3000億円近くにまで成長する予測が立てられている。
スマートハウスは、断熱や気密性能を高めてエアコンの使用頻度を低減したり、無駄なエネルギー消費を抑制するが、その肝となるのが全てのスマートハウス共通規格として用いられている「HEMS」というシステムだ。「HEMS」は、KDDI<9433>、パナソニック<6752>、東京電力<9501>、日立製作所<6501>、三菱自動車<7211>、三菱電機<6503>、シャープ<6753>、ダイキン工業<6367>、東芝<6502>、日本電気<6701>の10社が前例のない協力体制で開発したシステムで、これを使用することで、自宅にあるホームコントローラーから、スマートハウスを制御することができる。従来の電力モニターと違うのは、情報がデータセンターですべて管理されていることだ。そのお陰で、パソコンやスマホを使って、家の中はもちろん、外出先からでも使用電力のチェックができる。
大手ハウスメーカーを中心に続々と新しい商品が登場し、スマートハウスはこれからの省エネ住宅のスタンダードになりつつある。政府も様々な補助金や減税などの優遇策でスマートハウスの普及を支援している大手ハウスメーカーだけでなく、中小の工務店も参入しはじめており、住宅業界の動きも加速している状況だ。
また、「T-SMART」というブランドのスマートハウスを展開するタマホームは、今年6月からさらに事業を拡大し、原則として、同社が販売する新築住宅の全棟に標準仕様としてHEMSを導入し、全棟をスマートハウス仕様にすることを明言している。同社では「サービス・デリバリー・プラットフォーム(SDP)」というクラウドベースの情報基盤を採用し、HEMSによる電力の見える化だけにとどまらず、双方向型のサービスを提供する情報基盤として、今後、ヘルスケアや育児、趣味などの生活全般に関連する情報を提供する窓口として活用する戦略をとることを示唆している。さらに、これまでの同社で住宅を建てた顧客に対しても、HEMSの後付けサービスを有料で提供する予定で、今後3年間のうちに、新築3万棟、既築2万棟をスマートハウス化できると見込んでいる。
また、10年以上前から太陽光発電に取り組み、ソーラー住宅に関してギネス記録を保持しているセキスイハイムでは、グループ全体で10万棟以上の太陽光発電住宅の建設件数を誇る実績と技術を、同社の展開するスマートハウス「スマートハイム」でも活用している。太陽光で昼間に発電し、余った電力は電力会社に売電。太陽光発電を採用したスマートハイムの入居者約8割が「光熱費ゼロ」を実現しているというから驚きだ。さらに、割安な深夜電力契約を結べば、光熱費収支がプラスになることも難しいことではない。家中の電力を「見える化」する専用のナビを備えており、住まいの消費電力が数値だけでなく金額で表示されることも、節電に一役買っている。しかも、同社独自の蓄電システムで非常時でも電力供給が可能になっているので、震災以降、需要が伸び続けている。
あと数年もすれば、ほとんどの住宅でスマートハウスは標準仕様になるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)