消費者の「気分」はもう好景気突入?

2013年05月06日 18:45

 「気分」はアベノミクスにノセられている。これを、どう解釈すればいいのだろうか?

 一つ言えそうなのは、ビジネスの結果として企業が集計して出してくる業績数字や、それを政府機関や業界団体がとりまとめた経済統計と、消費者が思っていること、その消費者と接する現場の担当者が感じていることは、タイムラグがあったりして必ずしも一致しないのではないか、ということである。

 消費者が思っていること、つまり消費マインドは、アベノミクスがもたらす効果を先取りしていて、言ってみれば「気分」だけはすでに好景気に突入しているのではないだろうか。つい半年前まで不景気な話題満載だったテレビの経済ニュースで、為替の円安が進行したり、株価がどんどん上がったり、企業業績が改善したり、日銀総裁が交代して「異次元緩和」に踏み切って世界を驚かせたりといったニュースに頻繁に接していたら、子どもでも気分は良くなりそうだ。この春、安倍内閣の要請で賃上げやボーナスの増額を行う企業が増えたが、それがたとえ自分とは無関係な他人事でも気分は悪くはならない。「売れている」「混んでいる」「行列ができている」といった情報によく接していると、商品にしてもレジャーにしても、今までは「我慢しよう」とあきめていた消費を、「少しぐらいならいいか」と試してみる動機になる。

 その意味では、アベノミクスは現状、少なくとも「国民の気分」をノセて消費に対してポジティブな態度に変えることには成功している、と言えるかもしれない。人間は誰だって気分が乗らないと何をしても面白くない。ましてや消費行動はそうである。嫌々物を買う人はいないし、嫌々遊びに行く人もいない。気分がハイになってつい物を買いすぎたり、遊びすぎたりして浪費してしまうのは、誰でも一度は経験があること。その相手をする小売・サービス業にとっては、浪費はありがたいことである。

 「病は気から」と言うが、経済もかなりの程度「人の気分」に左右されるもの。「気分先行型」で個人消費が盛り上げれば、それが小売・サービス業の業績を浮上させ、製造業など他の産業にも波及して雇用が回復し、経済統計を軒並みプラスにしていく。それはアベノミクスで想定されていた順番とはアベコベになるが、景気の本格回復につながれば結果オーライだ。(編集担当:寺尾淳)