国民医療費削減の切り札 ジェネリック医薬品の普及率

2013年05月15日 20:52

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政府の国民医療費を賄う財源は、健康保険、税金、そして自己負担分の3つしかない。その3つが現在、火を噴いているのが実情だ。

 現在日本は少子高齢化の真っただ中、その進行速度は、年々上昇し、2025年には、700万人の団魂の世代が後期高齢者になる。その時の国民医療費は、70兆円にも膨れ上がると予想されている。政府の国民医療費を賄う財源は、健康保険、税金、そして自己負担分の3つしかない。その3つが現在、火を噴いているのが実情だ。

 このままいくと世界でも健康保険のモデル的存在として、喝さいを浴びた国民皆保険制度の破たんは免れないとの見方をする人は多い。つまり国民の全ての人が、健康保険に入り、健康保険証1枚で、いつでもどこでも安く医療が受けられる制度が破たんするということだ。

 こうした中で、国民医療費削減の切り札として登場したのが、「ジェネリック医薬品」だ。このジェネリック医薬品は、今に始まったわけではない。前々から特許が切れた医薬品が、ぞろぞろ市場に出回ったことから後発薬品といわず「ゾロ品」と言っていた。

 ジェネリック医薬品とは、簡単に言うと特許が切れた医薬品のことだ。製薬会社が開発した新薬は、開発してから20-25年特許を取得してから、販売を独占できる。これを先発品と言っている。その特許が切れた後、同じ有効成分で薬を作るので後発商品という、それがジェネリック医薬品である。

 欧米では早くからジェネリック医薬品は、60%近くの普及率だが、日本ではいまだに16%程度しかない。それは日本と欧米の医療制度が全く違うからだ。欧米では医療保険が極端に限られるので、莫大な医療費を請求される。

 日本は、医療制度が充実しているので、保健でかなりの部分カバーできる。健康保険さえあれば医療費、薬代1~3割負担という恩恵があるが、外国はこうした制度がないので莫大な医療費、薬代を払う。それだけに少しでも安いジェネリックの需要が増えるというわけだ。

 また、普及度が鈍いのはこうした理由だけではないようだ。未だに医師や、薬剤師のジェネリック医薬品への不信感が根づいているのも要因といえよう。

 20年くらい前には、ジェネリック医薬品は、零細企業や中小企業しか製造してなく、薬の卸店も新薬以外は取り扱っていなかったことで、医師や薬剤師にその情報が入ってこなかったようだ。

 現在でこそ大手製薬企業もジェネリックを生産しているが、MRはそうした情報は医師や薬剤師に積極的に与えてないというのが現状だろう。

 政府厚労省では、そうした不信感を拭うためにも、「加速試験」や「生物学的同等性試験」、そして2009年には「溶性試験」を取り入れるなど、ジェネリック医薬品の安全性、有効性の二重三重のチェック体制を強いている。しかし”笛吹けど踊らず”政府がいくら国民にジェネリックを使いなさいと、TVやCMで訴えても、肝心の医師や薬剤師にその気にさせなければ、進展はあり得ない。そのため政府厚労省は、2006年4月から、「代替調剤制度」を打ち出しジェネリックの促進に乗り出した。

 これは、今まで医師が出していた処方箋に、患者の希望があれば、後発医薬品変更可とあり、その下に医師の名前を書くといったもの。その時医師が商品名を指定しても、患者がジェネリック医薬品に変更できるという画期的なものだった。

 欧米では、この制度が早くから導入され、ジェネリック医薬品普及の原動力となっている。日本でもこれで大きく普及すると思われていたが、全く効果なし。署名する医師が、患者からジェネリックが欲しいという要望がない限り、署名しないというのが大半、自ら積極的に署名する人などほんの数パーセント。これだけでなく、医師が変更可の署名をしたにもかかわらず、調剤薬局の薬剤師が、何の変化も見せず、そのまま新薬を調剤するといったケースが大半だ。 薬剤師とすれば、調剤過誤の責任や、煩わしいこともあり、患者に問うことはまずしない。患者からジェネリックにしてくれと言ったら、今在庫がないという返事が返ってくる。

 これでは、普及も推進もあったものではないというのが現状といえよう。まず医師や薬剤師のジェネリック医薬品への啓蒙が必要だ。

 ここまで日本でのジェネリック医薬品の普及が遅れているのは、ジェネリック医薬品を患者が選ぶ仕組みができていなかったことが大きな要因と言えよう。今後は処方箋様式の変更により患者が医薬品を選ぶ時代になろう。その時には安いジェネリック医薬品を選ぶことになり、大きく発展していくだろう。(編集担当:犬藤直也)