政府は性的搾取など女性や児童が特に被害者になりやすい人身取引の撲滅にむけての取り組みを強化するため、新たな人身取引対策行動計画(素案)を取りまとめた。人身取引議定書の締結など国際的取り組みへの参画も盛り込んでいる。
現行の「人身取引対策行動計画」は2004年に策定され、これに基づいた取り組みがこれまで実施されてきた。
具体的には、人身取引に悪用されやすい在留資格になっていた「興行」の要件を厳格化したことにより、2005年当時約10万人いた興行での入国外国人は2008年には3万5000人と、3年間で65%減少した。
また、旅券法を2005年に改正し、翌年3月20日以降の申請分からは日本旅券をすべてIC旅券にした。人身取引事犯の取り締まり状況を外務省のホームページ上で公表するなど、啓発活動にも努めている。
このほか、人身売買罪の創設や入国管理法に人身取引加害者の退去強制事由を追加するなどし、昨年中にブローカーを含む33人の被疑者を検挙。2005年の刑法改正以降、昨年末までに人身売買罪で39件を起訴している。
被害者保護では被害者の一時保護をはじめ、入国管理法の改正により、在留特別許可を付与するとともに、帰国支援措置をとっている。2005年から2008年までの間に入国管理法違反状態にあった被害者104人に在留特別許可を付与し、帰国支援でも2005年5月から今年10月までの間に174人を支援、社会復帰につなげている。
政府は今回の見直しは「人身取引の手口がより巧妙化・潜在化してきているとの指摘があることに加え、我が国の人身取引対策に対する国際社会の関心も高く、人身取引の情勢に真摯に対応するため」としている。
また、「偽装結婚等の偽装滞在が疑われる者に対しては在留実態を追跡調査した上で、適正、厳格な在留審査を行うとともに、在留資格取消しの対象となる者については積極的に在留資格の取消しを行う」考えだ。
(編集担当:福角忠夫)