限定モルトと比較するために供されたグレンリベットのラインアップ。写真上段左から、The Glenlivet Nadurra、18yo、21yo、下段左から、25yo、そして謎のモルトウイスキーThe Glenlivet ALPHA。
謎のシングルモルト「The Glenlivet Alpha」の限定販売とは?
世界的にアルコール飲料消費が緩やかな減少傾向を描いている。なかでも、1990年代から旧西側諸国と言われる地域で、ウイスキーやブランデーに代表されるハードリカー(特にブラウンスピリッツ:筆者の造語)の消費者離れが進んでいる。
バブル崩壊以降、アルコール飲料業界では、「食事と合わせやすい“食中酒”は売れるが、“食後酒”は売れない」が定説となった。ワインや混ぜ物中心の焼酎はまだしも、ハードリカーの苦戦傾向に歯止めがかからない。
しかし、2000年以降にシングルモルトという概念がウイスキーファン以外にも理解されはじめ、ウイスキー全般の売上高は毎年前年割れが続くなか、シングルモルトだけは緩やかな上昇カーブを描いて人気が高まってきた。
日本にオフィシャルボトルとして正規輸入されているシングルモルトは50ブランドほど。それぞれに複数の熟成年数や熟成樽ごとに種々ラインアップがあるので、オフィシャルボトルだけで数100種類となる。酒類商社などの並行輸入を含めると100ブランド以上で、ボトラー物といわれる特別なモルトを含めると無限の味わいが愉しめる。
各有力ブランドではシングルモルト人気を維持するために、時々“限定ボトル”と称した特別なボトルを発売してブランドPRに活用する。今回、グレンリベット(ペルノ・リカール社)が発表した「The Glenlivet Alpha」(グレンリベット・アルファ)もそんなボトルだ。そもそも、グレンリベットは限定ボトルなどをあまり作ってこなかったブランドだが、今年2月には「グレンリベット・シングルカスク・ネビー16年」を発売し好評を得た。これは生産本数210本だけ、日本市場限定の商品だった。
ところが、今回の「Alpha」はマーケティング手法に新しさがある。世界17カ国で3350本だけ流通する斬新な漆黒のボトルは、一般酒販店では販売されない。国内では選り抜きの“本格BAR”だけで味わうことができるシングルモルトなのだ。加えて、このシングルモルト「Alpha」は一切のスペックが発表されていない。つまり熟成年数、熟成樽(カスク)の種類などの商品情報は、ほぼBARでの販売が終了する6月中旬まで公表しない。つまり、料飲店の販売促進をも狙った特別限定ボトルで「Alphaモルトの謎解きはバーテンダー氏といっしょにBARカウンターで!」ということ。
筆者は幸運にもゴールデンウイーク明けに開かれたテイスティングミーティングで、従来のグレンリベット・ラインアップと比較しながら1杯だけ味わうことができた。個人的な想像では「販売数量からバッティドモルトであるのは明らかで、バーボン樽熟成の比較的若い原酒。もしかしたら、ほんの少しだけシェリー樽原酒が含まれているかも。そんな香りが仄かにしたような──」とお伝えしておこう。
なお、このブラックボトル「The Glenlivet Alpha」(グレンリベット・アルファ)が飲める店(BAR)は、ペルノ・リカール・ジャパンで確認できる。(編集担当:吉田恒)