大衆薬メーカーならではの商品企画力に期待
再生医療には今、バイオベンチャーや大手医薬品メーカーが次々と参入して研究に取り組んでいるが、医家向け医薬品ではなく大衆薬の分野で強固な基盤を築いているロート製薬は、それゆえの独自の強みを持っている。
上場企業の豊富な資金力という点では他の大手医薬品メーカーとあまり変わりないが、それに「商品企画力」が加わる点に違いがある。脂肪幹細胞を用いた再生医療で医薬品化を実現し、改正される薬事法でそれが厚生労働省の承認を得たとしても、それをどんな商品に仕上げて、誰に向けてどんなルートで販売するかで、ビジネスの成果が変わってくるからである。
たとえば、傷ついた皮膚組織を再生させるという成果が得られた場合、医家向け医薬品のメーカーであれば皮膚科の皮膚疾患の治療薬という領域からあまり外には出ないと思われる。ノウハウが乏しい領域に出ていきコストをかけて苦労するよりもそうするほうが、新薬の特許期間中のライセンス供与も含めて収益をしっかり確保でき、研究開発投資を回収できるからである。
だが、スキンケア製品で多彩な商品ラインナップと豊富な経験を持っているロート製薬なら、皮膚疾患の治療薬の発売にとどまらず、その技術を応用して皮膚の健康を増進する医薬部外品や機能性化粧品も含め、さまざまな商品企画のアイデアが出てくると期待できる。また、それにつながるような研究開発体制もすでにできている。その点はまさに、消費者との接点が多くマーケティングや広告宣伝に力を入れている大衆薬メーカーが得意とする部分だろう。
そうやって、再生医療の研究成果を応用した商品に消費者が日頃から薬局等で接することができるというのは、国民医療費抑制のために政府が推進しようとしているセルフメディケーション、予防医療という観点でも非常に重要なポイントになる。そこには、再生医療の応用の裾野をひろげ、将来の市場規模を予測よりもさらに大きくさせる可能性が秘められている。(編集担当:寺尾淳)