研究は最先端でも、実用化の進まない日本の再生医療

2013年03月12日 13:14

 昨年、京都大学山仲教授がノーベル賞を受賞したことで一躍注目を集めた再生医療。この再生医療につき、経済産業省が立ちあげた「再生医療の実用化・産業化に関する研究会」が最終報告書をまとめた。

 これによると、今後、iPS 細胞等の多能性幹細胞活用を含め幅広い疾患において再生医療が行われれば、2030 年には約1兆円、将来的な市場として2050年には2.5兆円にまで拡大すると予測されている。「研究開発予算の増額による基礎研究の促進、大学等における医師主導治験を実施するための体制整備、また、早期承認制度等の制度改正が行われることで、再生医療の実用化が促進され、より早い時期での市場拡大が期待される」という。しかし、現在日本で薬事法の承認を得て市場に登場しているのは、重症熱傷のための自家培養表皮と膝関節軟骨治療のための自家培養軟骨の2品のみ、治験中であるのも4品目のみである。一方欧州では20品目が上市され42品目が治験中、米国でも9品目が上市され88品目が治験中であり、韓国でも14人が上市、31品目が治験中である。この数字を見れば、日本の実用化、またそれに向けた取り組みがいかに遅れているかが一目瞭然ではないだろうか。

 実用化が遅れている反面、ノーベル賞の受賞にもみられるように研究段階では日本は決して遅れているわけではない。先日も、東京大学と明治大学との共同研究が、遺伝子導入と体細胞クローニング技術を用いて、すい臓のないクローンブタを作ることに成功。さらに、このすい臓のないクローンブタに体細胞クローニング技術と胚盤胞補完技術を用いて、健常ブタの胚細胞由来のすい臓を作ることに成功している。また京大の研究グループも、ヒトiPS細胞を分化誘導させ、腎臓や生殖腺などの元となる中間中胚葉へと高効率に分化させることに成功するなど、遅れるどころか、業界をリードするような研究成果を積み上げている。

 再生医療には様々なカテゴリがあり、これらを同一のルールで規定することは困難であることやコストの問題、そして倫理的な問題など、再生医療には様々な課題が立ちはだかっている。諸外国では承認されているのだから日本でも承認すべきだ、などという乱暴な主張には到底首肯することは出来ないが、研究から実用化までの道のりが長すぎることは、経済政策上、致命的な欠点と言えるであろう。どれだけ迅速に制度が整い、いつになれば運用が始まるのか。目の離せない動向の一つではないだろうか。(編集担当:井畑学)