モラトリアム法案期限切れの影響

2013年05月20日 17:06

 2009年12月に施行された「モラトリアム法」(中小企業金融円滑化法)が、今年3月末にとうとう期限切れとなった。

 この法案は、銀行や金融機関などに、資金繰りの厳しい中小企業の返済猶予に応じるように求めた時限立法であり、「中小企業金融円滑化法」という名称が付いていることから、一見すると個人には関係のない法案のように思われがちだが、実は個人向けのローンの返済猶予も対象として含んでいる。

 住宅ローンを組んだ債権者の生活の安定を目的として定められたこの法案は、当初2011年の3月末を期限としていたが、その後二度の1年間延長を経て、期限切れとなった。

 「モラトリアム法」はあくまで「努力義務」であって、債権者の延長希望に応じてくれるかどうかは金融機関によって異なっていたが、比較的多くの銀行や金融機関がその求めに積極的に応じた結果、施行後の3年間で競売物件が約5万件も減るなど、返済能力を失った多くの債権者のマイホームを守る役割を果たしていたわけだが、その法案の期限切れを迎えたことにより、それらの世帯数が失われる危険性が出て来た。

 また「モラトリアム法」はあくまで返済の先延ばしでしかなく、決してその借金が無くなるわけではない。そのため、施行後の2010年9月から2011年の9月末までの返済を猶予された金額、累計で約3兆6000億円といわれているこの金額が、返済能力を失った債権者に直撃することが予測されている。これはいわば、日本版の「サブプライム問題」とも指摘されている。

 さらに、今後はローン金利が上がる可能性も示唆されており、変動制でもってローンを組んでいた世帯などには、その負担がさらに増加することが予想されている。また、そうした状況を鑑みた銀行側が、素早く債権の回収に急ぐのではないかとも懸念されている。

 「モラトリアム法案」の期限切れ。この影響はすぐに表れるものではないと言われているものの、しかし同時に、年内にも10万世帯の「マイホーム」がローン破綻するのではないかとも予想されている。(編集担当:滝川幸平)