現在、東日本大震災の影響で日本の電力会社のありようが問われている。が、電力がこれほどまでに重要な生活インフラとなったのは、それほど古いことではない。
内閣府の「消費動向調査」によると1953年を日本の一般家庭の「電化元年」としており、以降、電気洗濯機、電気冷蔵庫、電気掃除機が急速に普及し始めた。それ以前の電力はあくまで明かりを灯すための“電灯”でしかなかった。その後の高度経済成長はあらゆる生活家電を普及させ、豊かな家庭生活に「優良で十分な電力」は欠かすことが出来ないものとなった。その一方、古い木造住宅に“電灯”を灯すために引き込んだだけの劣悪な電線は漏電火災や感電事故をしばしば発生させた。そのため家庭用分電盤への漏電遮断機設置が進み、住宅の安全が担保されるようになったのである。
冒頭で附した東日本大震災で、この生活インフラである「電力」供給が大きな課題となり、大規模災害に対して脆弱であることが露呈。一般家庭での太陽光発電や家庭用蓄電池などの自衛策が話題にのぼるようになった。なかでも注目されているのは電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などのバッテリーを災害時の非常用電源として使う方法だ。ただ、クルマのコンセントから安心して電気を使うために、今後は一般家庭と同様の機能を持つ“漏電遮断装置を装着”することが必須となりそうなのだ。
そのトレンドにいち早く応えた製品が登場した。京都の半導体メーカー、ロームが開発した車載用漏電検出IC「BD9582F-M」だ。自動車用の部品は生活家電よりはるかに高い信頼性が求められ、単に家電用のICを流用すればいいというわけにはいかない。そんな中、ロームの漏電検出ICは、マイナス40度からプラス105度までの温度保証(従来はマイナス20度からプラス95度)と電磁波による誤動作防止対策を実現しており、安心して使用することができる。加えて業界最少クラスの消費電流(330マイクロアンペア)を達成し、バッテリーの消費低減にも貢献している。
東日本大震災規模の大災害はいつ発生してもおかしくない。真冬の北海道の最低気温はマイナス30度以下になる。真夏の東京の炎天下に停めたクルマの車内は80度を超える。新開発のローム漏電検出IC「BD9582F-M」によって、災害時のEVなどバッテリー電源の信頼性と安全性は飛躍的に高まるはすだ。
なお、同社によるとこの新製品は2012年に車載メーカーからの依頼で開発がスタート。サンプル出荷を経て、すでに採用も決定しているという。現在は車以外にも、大型機器向けとしての引き合いも増えているという。(編集担当:吉田恒)