富士経済が、世界のHV(ハイブリッド自動車)、EV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド自動車)の世界市場を調査・発表した。これによると、最も市販化の進んでいるHVの2012年販売台数は160万台が見込まれている一方、ようやく普及をはじめたPHVは同6万台、一向に普及の進まないEVも同7万台が、それぞれ見込まれている。PHVやEVが徐々に市場を拡大すると見られているものの、今後も暫くはHVが市場の中心であり続けそうである。
トヨタ<7203>のプリウスとアクアが牽引し、日本市場が前年の2倍、米国市場が同1.6倍の伸びが見込まれているHVは、2020年には日本の自動車総販売台数の31.1%に成熟。欧米系メーカーもハイブリッド化を推進し、2025年にはそれぞれの国の自動車総販売台数の欧州17.8%、北米12.2%、30年には同20.1%、同18.2%を占めるまでシェアが拡大すると予測され、2030年の世界市場は2012年比5.4倍の863万台になると見られている。
PHVに関しては、HVで出遅れている米国メーカーが巻き返しを図るためにこの市場に注力をしており、北米需要が市場を牽引すると見られている。日本においては、車両価格の高さに加え、ガソリン給油と充電を別の場所でしなければならないといったインフラの未整備も普及の壁となっており、プリウスPHVの販売も目標を達成出来ていない。EVまでのつなぎ役と期待されるPHVであるが、日本ではEVの市場開拓もインフラの整備も進んでいない。本調査では、2030年頃には世界の市場でEVがかなりのウエイトを占めるとして、それに伴うPHVの需要も増加、2030年には2012年比32.3倍の194万台へと市場が拡大すると予測しているが、行く先の不透明感は否めないのではないだろうか。
EVに関しては、企業や自治体の環境アドバルーンに過ぎないのが現状である。ダイムラー、BMW、フォードは試験を目的とする限定販売のみ、GMも試験販売止まりである。しかし、PHVやHVで出遅れている欧米メーカーはEVに注力せざるを得ない。急速充電規格に、先行する日本の採用する「チャデモ方式」ではなく、欧米メーカーが推進する「コンボ方式」が採用されたことからも、欧米メーカーがEV市場で先頭に立とうと必死であることが窺える。そのため、2030年には2012年比43.9倍となる307万台にまで市場が膨らむと予測されてはいるが、一方で、日系・欧米各社が連携した燃料電池自動車(FCV)への注力も始まっており、航行距離などの課題とも相俟って普及は限定的であろう。
EVは、従来のガソリン車やHVなどにとって代われるものではなく、どちらかと言えば、自転車や原動機付自転車に近い位置づけになるであろう。一方、ガソリン車の後継として期待の高まる燃料電池自動車であるが、その燃料となる水素の貯蔵方法や充填・運搬の際の安全性が大きな課題として立ちはだかる。次世代自動車といわれる類の普及、一般化への道のりは想像以上に長いものとなるのではないだろうか。(編集担当:井畑学)