総人口6億人を有し、5%以上の成長を続けている東南アジア。安価な労働力や内需の大きさから、日本企業からの投資は製造業や社会インフラに対するものが中心であった。しかし成長が続き、生活水準が向上するにつれ、徐々にその内容が変化。近時は住宅メーカーによる進出が活発化している。
パナホーム が、マレーシアの首都クアラルンプールで建設していた戸建住宅試作棟(東南アジア仕様)を2013年3月に竣工。パナソニックグループの総合力を結集し、東南アジア版の「エコアイディアの家」として具現化したもので、同社にとって海外における戸建住宅試作棟の建設は初めてとなる。本試作棟は、昨年5月に設立した住宅建設請負の現地子会社パナホームマレーシアによりモデルハウスとして運営され、マレーシアにおける戸建住宅事業の展開を足がかりに、東南アジアでの「住生活産業No.1の環境革新企業」を目指すとのこと。
また2009年からタイで住宅事業を展開していた積水化学工業 住宅カンパニーは、タイ・バンコクの北方約80キロメートルに建設していたユニット住宅の量産工場が竣工。この年間生産能力1000棟の工場竣工に合わせ、タイ国内のボリュームゾーン向けの新商品を開発、発売。今後、工場生産による工業化住宅の企画開発・販売・生産・施工・アフターサービスを一貫して行う、日本で構築したビジネスモデルを現地企業との合弁で展開するとのこと。
その他、日本企業のベトナム進出に伴うコンサルティング事業も手掛けるエマールグループも、日本のハウスメーカーや建材メーカーと提携し、ベトナム及びASEAN市場に、日本の住宅建築とその販売、そして現地での不動産投資ビジネスを展開するなど、東南アジア各国における住宅メーカーの動きは枚挙にいとまがない。
東南アジア各国における住宅は、断熱性能が低い建物で、エアコンを過剰に使用することによる電気使用量の増加、建物の防水技術が脆弱で、雨漏り・漏水が日常的に発生、交通量の多い場所における騒音、建設技術の未発達による工期の長期化など、様々な課題を抱えている。こうした課題と国内市場の縮小を見込んだ海外進出と、国内住宅のスマート化の二本柱が、いずれの住宅メーカーにとっても成長の軸となる。今後は、いかにして他社との差別化を図った展開を出来るかに注目が集まるであろう。