パワハラが労働相談のトップに

2013年06月04日 20:32

 先月31日に厚生労働省は、2012年度の全国の労働局の「個別労働紛争」が受け付けた相談内容において、「いじめ」や「いやがらせ」といった、いわゆる「パワハラ(パワーハラスメント)」に関する相談件数が、11年度のトップであった「解雇」を上回り最多となったことを発表した。

 「パワハラ」に関する相談は02年度より増加傾向にあり、それは職場での「いじめ」や「いやがらせ」というものも、労働問題として取り上げられるべきだという考えが、広く認知されるようになったためではないかと、厚労省は分析している。

 労働局に寄せられた相談として、「上司から暴言を吐かれ、無能呼ばわりされた」「怪我や病気中にも関わらず、肉体的に過酷な労働を指示された」「同僚から仕事のことでバカにされ、頭を叩かれた」などがあり、こうして「パワハラ」の相談件数が増加した背景には、企業側が従業員に対して、「短期間で効率良く成果を上げる」という考えを強く押しつけている現状があるためではないかと考えられている。

 そうして「パワハラ」を受けた人の中には、職場環境に耐え切れず、やむなく退職に追い込まれたり、ストレスのため精神疾患となり、通院を余儀なくされている人もいる。このように全国の職場で蔓延する「パワハラ」を深刻に受け止めた厚労省の作業部会は、今年の1月、「パワハラ」についての報告書をまとめ、これは政府が初めて「パワハラ」を定義した動きとして注目された。

 厚労省は「職場におけるパワハラ」について、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える、職場環境を悪化させる行為」と定義。また、「暴行、傷害(身体的な攻撃)」「脅迫、暴言(精神的な攻撃)「隔離、無視(人間関係からの切り離し)」「過大な要求」「過小な要求」「私的なことに過度に立ち入る個の侵害」など、6つの形に分類し、その行為の明確化を図り、防止と予防を企業に呼びかけた。

 しかし、今回の厚労省の発表を見る限り、その取り組みが現場レベルで効果を発揮するまでには、まだ少し時間がかかりそうである。健全な環境のもとで働きたいと願う人たちのため、一日も早く「効果的なパワハラ防止・予防策」が講じられることが求められている。(編集担当:滝川幸平)