今、全国の温泉地、リゾート地は、海外からの大幅な客の減少で、苦境に陥っている。特に中国の落ち込みが厳しく、倒産寸前のホテル、旅館は多い。
こうした中、政府は「改正耐震,改修促進法」をこの5月に成立した。これを受けて、全国82の温泉都市で作る「温泉所在都市協議会」が6月4日、東京都内で総会を開いた。会は、「改正耐震、改修促進法」について旅館、ホテルのイメージを著しく損なうものとし、金銭面においても、重い負担を強いると指摘、国の配慮を求めた。
同法は、古い大型ホテル、旅館などの耐震診断結果を公表し、耐震工事をするよう求めるものだ。この法の対象となるのは、1981年6月1日以前に建てられた不特定多数の人が利用する大規模施設で、延べ約5000平方メートル以上の建物で、主にホテルや、旅館、病院が該当することになる。
診断した結果を自治体が公表し、工事が必要な部分は、費用の一部を、国や自治体が支援するというもの。国土交通省は、全国の数千の施設が、耐震診断の対象となるものとみている。
この日の会議に出席したのは、北海道登別市や、静岡県熱海市、石川県加賀市、松山市の市長や、担当者など計36人。熱海市の試算では、同市内には、耐震診断の対象となる旅館は少なくとも14軒、全館の耐震工事をすると約100億円がかかり、補助額も数億円は避けられず、年内税収が100億円の同市にとって重い負担となろう。
このような傾向は熱海市だけに限らず、出席者からは、改装、改修工事の費用だけで倒産する旅館、ホテルが続出するだろう、との切実な声も上がった。客の安全を優先することは当然だが、不況感と法改正のダブルパンチに見舞われた旅館業界は、生き残りをかけた戦いが今始まる。(編集担当:犬藤直也)