日本原電に求められる国民への「安心の担保」

2013年05月19日 16:24

158_e

このような惨事はもう二度と起こしてはならない

 原子力規制委員会の専門家会議が福井県敦賀市にある日本原子力発電(日本原電)の敦賀原発について、2号機の真下を通る断層を「活断層」と判断した。規制委員会は専門家会議の報告を受け、近く協議に入る。活断層の上に原子炉建屋などを設けることは国の指針で認めていないことから、廃炉に進む可能性が高まっている。

 東京電力福島第一原発事故が生態系に及ぼしている地球環境への影響や地域住民がふるさとを離れなければならない深刻な影響を踏まえれば、危険回避のための措置をとるのは当然で、限りなくゼロに近いものであっても、危険がある限り、日本原電は国にでなく、人類やすべての生命体のことを踏まえた対応を謙虚にとるべきだ。

 残念ながら日本原電は原子力規制委員会専門家会議が2号機真下の断層を活断層とした直後「およそ科学的、合理的な判断とはいえない」とした。

 有識者会議の有識者らの判断に「到底容認できない」と厳重抗議。そのうえで「提出の調査データを中立・公正な立場に立って改めて詳細に検討し、真に科学的な観点から議論を行い、客観的データと根拠を明確にしたうえで、改めて結論を」と再検討を要求した。

 日本原電は指摘されている断層について、専門家会議が「『K断層とD-1破砕帯の厳密な連続性は必ずしも確認されていない』としながら『K断層とG断層については『D-1破砕帯と一連の構造である可能性が高いと考える」などをとりあげ、「このような推測的な根拠のみで判断するというのは科学的とはいえないと考える。この点の科学的妥当性について何らの検証もなされていない」などとした。

 抗議では専門家会議が報告の中で使用した「可能性」や「比較的」「それほど堆積時期に差がない」などの表現をとりあげ「感覚的な推量のみにより一方的に決め付けている」と反論。「科学的合理性のある判断とは言えない」と受け止めていることを説明し、科学的合理性のある判断と言わざるを得ない報告を求めた。

 加えて、立証責任は規制権限を行使する規制当局にあるとした。日本原電は「立証責任が事業者側にのみあるとする考え方は全くの誤りである。(規制当局の有識者会議こそが)裏づけとなるデータと根拠を明確に示して、科学的に証明し、説明する責任がある」と立証責任を規制委員会に求めた。

 100%断定できる判断材料が得られるのか。得られなければ良しとしないとすれば、原子力規制委員会が運転再開を認めない場合、裁判になる可能性が高い。日本原電は敦賀原発2号機の運転再開を目指しており、その意に反する結論になる。また「D-1破砕帯、K断層は後期更新世以降の活動はなく、耐震設計上考慮すべき活断層ではない」と断言しているからだ。日本原電もまた、国民の世論ではなく、科学的合理性による根拠のみに従うことになるのだろう。

 さて、日本電源は国を相手に訴訟したとして、国民への安全・安心の担保をどうするのか。原子炉建屋から3キロ以内のところにマンションを建設し、社長はじめ役員全員とその家族。株主比率で1%以上を保有する電力各社の社長の家族にそこに住んで頂くくらいの「活断層ではない」との信頼性や国民への安心を担保することができるだろうか。原発事故の悲惨さや取り返しのつかない損失を考えれば、そこまでの覚悟を持って原発の安全性に取り組むのは当然の話だ。(編集担当:森高龍二)