日本に飛来する黄砂の要因にもなっている中国・内モンゴルの砂漠化現象から、本来の内モンゴルの自然を取り戻そうと、山田養蜂場が植樹ツアーを企画し、今夏、現地の中学生らとともに、リョウトウナラ、ニレなど10種類、5万本を植樹した。現地では地球環境への意識を高めると共に、日中友好の絆を深めた。同社の中国での植樹活動は今年で5年目。植樹した苗木は123万本を数える。
植樹が行われた内モンゴル自治区は中国の北部に広がる人口約2350万人の都市。面積は118万3000平方キロメートルと日本の約3倍の広さを有し、農業や畜産業を主産業にしている。ハイテク製品に欠かせない希土類(レアアース)の生産量は中国トップを誇っている。
しかし、人口増加や食生活の変化と共に、自治区内ではヤギや羊飼育のための放牧地や農業地の拡大が進み、森林が相次いで伐採され、国土の砂漠化が広がりをみせ、問題になっている。植樹された林西県では2000年から、砂漠化が迫った農地を買い上げ緑化に取り組むとともに、砂漠化の原因になっている過放牧を禁止する措置をとるなどに努めているが、自然回復までには相当の時間がかかるもよう。
みつばち産品の原料取引で中国とのかかわりが深い山田養蜂場はこうした状況を知り「食料をはじめ、文化などでも大きな恩恵を受けている中国に恩返しができれば」と2001年から横浜国立大学と共生植生調査・植樹プロジェクトをスタートさせた。3年後の2004年はフフホト市で、2005年からは林西(リンシー)県でリョウトウナラなどを植樹している。2005年に植えられた15センチほどのリョウトウナラは、現在50センチ程度にまで成長している。
今年の内モンゴル植樹ツアーは6月19日から6月23日の日程で催され、日本から40人が参加。現地の中学生ら約200人も加わり、林西県近郊の地にリョウトウナラ、ニレ、アンズなどを植樹した。植樹指導には植物生態学の権威・宮脇昭・横浜国立大学名誉教授と藤原一繪・同大学教授があたり、自らも植樹。今後の管理方法や森林育成の意義などを参加者らに説明した。植樹は「宮脇方式」と呼ばれる方法で、現地の樹種のポット苗を複数作り、混植、密植することにより互いの競争で、共生し、根が張っていくというもの。
参加した現地の中学生は「環境を守るだけでなく、日本と中国との友好にも良い」と今後も継続的に植樹活動が行われるよう期待を寄せていた。また、「森が大きくなったらいいな」と緑の復活に夢を託していた。山田養蜂場では「来年も植樹ツアーを企画し、5万本の植樹とともに、友情の輪を広げたい」(守安健一文化広報室長)と話している。