岡山大病院(岡山市)は、7月1日、肺の機能が低下した関西地方の男児(3)に、母親の右肺中葉部分を摘出して移植する生体肺中葉移植手術を実施、成功したことを明らかにした。生体での中葉手術は世界初。国内最年少の肺移植患者となった。
執刀したのは、岡山大病院の大藤剛宏准教授で、「移植した肺は、順調に機能している。経験のない手術で、難しかったが無事成功した」と語った。病院によると、生体での中葉手術の成功は世界初で、男児は、国内最年少の肺移植患者になるという。
肺は左肺が上葉と下葉、右肺が上葉と中葉、下葉に区分される。通常肺移植手術では、下葉が使われるが、幼児には大きすぎるうえ、幼児のドナー(臓器提供者)が現れる可能性も低かったため、より小さい中葉を移植することにしたという。
日本呼吸器学会によると、平成22年に改正臓器移植法が施行され、15歳未満からの脳死での臓器提供が可能になったが、これまでに行われたのはわずか2例のみ。特に6歳未満の幼児からの提供は、22年6月の1件だけと言うのが現状だ。そのために大人からの臓器提供に頼らざるを得ないが、大人の場合、生体肺移植に使われる下葉は子供には大きすぎ、そのまま移植するのには無理があった。
日本移植ネットワークによると、5月末現在で、0~9歳児では3人が肺の移植を待っているという。今回の移植の成功で、大人から子どもへの移植の機会が増える可能性があるといえよう。一方では、生体からの臓器移植は、健康な提供者の体にメスを入れる事への倫理的な問題も指摘され、国内外で提供者が死亡した例もある。今後家族が提供を強制されることがないよう、十分な説明や意思確認が求められる。(編集担当:犬藤直也)