新規ビジネスの開拓を模索する中堅・中小メーカーの中で、3Dプリンターを活用する動きが活発になっている。
3Dプリンターは、3次元で製作した設計データをもとに、まるで印刷するような手軽さで立体物が造形できる夢の工作機械技術だ。3D-CADで設計したら、すぐに3次元モデルを造形して評価できるので、これまで試作品の製作や小ロットの製品製作にかかっていたコストや期間が大幅に削減できる。
コストや期間の問題だけでなく、社内で比較的簡単に製作することが可能なので、多様なアイデアを確かめたり、企画・設計を具体的に進めることができるうえ、現物に近い状態のものを作ることで不具合なども未然に防ぐことができる。その結果として、クオリティの高い製品開発につながるのも大きな魅力の一つだ。
さらに、多くの場合は自社で完結できるようになるので、デザインなどの情報が外部に漏れるリスクを軽減できるというメリットもある。
これまでは設備投資に多大な費用がかかっていたが、ここ数年で百万円を切る安価で高精細な3Dプリンターが出回り始めたことから、大企業だけでなく、中堅・中小メーカーにも需要が拡大しており、矢野経済研究所では、15年度には関連事業者の売上高が77億円にまで市場が伸張すると予測している。
日本では、丸紅情報システムズ<8002>が、世界中で1万台を超える実績を持つ世界トップシェアの米ストラタシス社製の3Dプリンタ及び3Dプロダクションシステムを取り扱っている。また、株式会社キーエンス<6861>も世界初の水溶性サポート材の3Dプリンタ・アジリスタを展開しており、導入を検討しているユーザーに向けてお試しレンタルや体感セミナーを開催して積極的に普及に努めている。
そんな中、アメリカの代表的なクラウドファインディングであるKickstarterに、なんと日本円で4万円をきる超激安の3Dプリンタプロジェクトが登場し、話題を呼んでいる。
米パロアルトの新興企業Pirate3Dが開発中の「Buccaneer」は、本体サイズが25×25×35センチと小型のスタイリッシュなボックス型で、卓上にも置ける3Dプリンタ。さらには簡易な3Dモデリングソフトや無線接続機能も付属しているという。さらに、セッティングが簡単な上、モバイルやクラウドにも対応している。わずか4日間で50万ドル以上の出資を獲得したというが、開発段階のため、実際、プロユースにどこまで耐えられるかは未知数。ともあれ、個人向けとしても破格で、とても興味深いものであるのは間違いない。
今後、益々、3Dプリンターの導入が進めば、大手メーカーも試作品や小ロットの部品の製造などを下請けに出す必要性がなくなり、メーカーに依存している中小の工場などは受注件数が激減し、大きな打撃を受けるのではないかと懸念する声もある。
しかしながら、見方を変えれば、大企業への依存から脱却し、一般消費者のニーズを踏まえたBtoCビジネスに踏み出せる大きなチャンスでもある。
この諸刃の剣を上手く使いこなすことができれば、今は下請けの中小でも、次世代のものづくりの市場で主役に躍り出ることも可能かもしれない。(編集担当:藤原伊織)