「偽装質屋」のウラに隠された、ニッポンのお年寄りの孤独 

2013年07月15日 16:53

 「質草は何でもいい」「年金口座から自動引落し」……こうした謳い文句で「質屋」を装い、年金生活のお年寄りに高金利で金を貸し付ける「偽装質屋」が増えている。ほとんど価値のない物品を質に取り、実際には年金などを担保として違法な高金利で貸し付けをするのだという。

 このニュースを最初に報じたのは6月7日の日経新聞。その4日前に国民生活センターが出したリリースを受けての報道だろう。遅れること約1ヶ月、今度は朝日新聞がルポルタージュ形式でこの問題を報道。「無縁社会」に象徴されるお年寄りの孤独を追ってきた朝日新聞の報道が、日経にこれほど遅れをとった理由は分からない。しかしその分、偽装質屋に通うお年寄りたちの実態を綿密に取材してある。
 
 国民生活センターに寄せられた相談には、たとえば次のようなものがある。福岡県の60歳代の男性。自宅の郵便受けに入っていたチラシを見て電話したところ、「何でもいいから質草を持ってきて」と言われた。ゴミ同然の時計を持って行ったが、9万円も貸してくれた。返済は年金支給日に口座から自動引落し。だが利息が高いので11万円以上も返済しなくてはならず、とても支払えない。このままでは生活できないという。

 全国の消費生活センターに寄せられる相談は、数年前から増加の一途をたどっている。2012年度は194件と、この3年間で4倍以上になった。実際には泣き寝入りしているケースも多いことを考えると、この数字は氷山の一角だろう。被害者は60歳以上のお年寄りが全体の7割以上を占め、年金生活者の懐が狙われていることが分かる。

 貸金業における上限金利は、2010年にそれまでの29.2%から20%まで引き下げられた。ところがこの年から、法律よりはるかに高い金利で貸し付ける、いわゆる「ヤミ金」が増加。偽装質屋も実態は、質屋の形をとったヤミ金の一種である。

 高齢者の所得格差は、他の世代と比べて大きい。家計の状況をみると「赤字になる(「ほぼ毎月赤字になる」と「ときどき赤字になる」)」と回答した人の割合は4割以上(平成23年版 高齢社会白書)。生活に困ったお年寄りたちが「偽装質屋」のターゲットになっている。

 国民生活センターでは、偽装質屋からの借り入れは絶対にしないよう、また困ったときは自治体の窓口などに相談するよう呼びかけている。

 だが、生活費が工面できず借金をしなければならないようなお年寄りが、そのような公的な機関に出向いて自主的に相談できるだろうか。実際は家族にも友人にも頼れず、誰にも相談できないまま泣き寝入りしてしまう人も多いだろう。「偽装質屋」問題の背景には、孤独な日本のお年寄りの姿が透けて見える。