航空会社が定期的にユニフォームをリニューアルしていくというのは、特に珍しいことではない。しかし、「試着」と称して最終決定前に、実際に業務の時に着用するというのは前代未聞ではないだろうか。そんな発想を持つことがすでに、アヴァンギャルドである。そしてそれを実現してしまうところが、この航空会社強みなのだろう。
ヴァージン アトランティック航空は、空港、空港ラウンジ「クラブハウス」、及び機内にて、ヴィヴィアン・ウエストウッドのデザインによる新ユニフォームの試着を開始した。デザインとファブリックの最終決定、及び工場への製作発注前に180名のヴァージン アトランティック航空キャビンクルー、パイロット、地上職員、「クラブハウス」、そして「ヴァージン ホリディ」のスタッフが数か月にわたり、ユニフォームを着用し、着心地と実用性を確認するという。 因みに同社のユニフォームのリニューアルは、1998年以来、6年ぶりのことである。
スタッフはそれぞれ、各フライトや職務の後に意見を提出し、最終的な導入となる2014年に向けて、調整が行われる。ユニフォームは、フィット感、快適性、通気性、動きやすさ、着用前後のしわの状況、クリーニング後の見た目と感触、痕や汚れへの耐性などがチェックされるという。
ヴァージン アトランティック航空 デザイン部門長、ルーク・マイルズ氏は、「当社のスタッフ、特にキャビンクルーは、その制服を着用したとき、航空業界の中でも最も羨望を集める存在となります。当社のアイコンである赤のユニフォームは、世界的にもよく知られており、デザインを変更する際にも、それが軽視されることはありません。試着は世界中の弊社チームとともに取り組み、フィードバックを得る重要な過程の一つです。制服はきちんと見えること、実用性があり、着用が容易であることなど、デザインの上での難問が多いのですが、スタッフ及びお客様にとってとても意味のあるもので、正しく理解されているか確認しなければなりません。ヴィヴィアン・ウエストウッドのデザインは、空港から機上に至るまで、魅力的であると確信しています」と述べている。
70年代にセックス・ピストルズをプロデュースした、ヴィヴィアン・ウエストウッドを航空会社のデザイナーに迎えること自体が、非常にパンクであり大胆なマーケティングの試みだ。もっとも同社の会長で、ヴァージン・グループを率いる、リチャード・ブランソンからすれば、特別なことではないのだろう。ともあれ乗客が、最終決定前の航空会社のユニフォームを目にすることができるというのは、実に楽しい企みである。(編集担当:久保田雄城)