三大メガバンク(三菱UFJFG<8306>、みずほFG<8411>、三井住友FG<8316>)の2013年度4~6月期決算は、純利益ベースでは34~144%の大幅増益で、貸出から得られる資本収益が海外で大きく伸びたことが寄与した。心配された3月末の「中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)」期限切れによる貸倒の急増も見られず、不良債権残高もそれぞれ順調に減っている。みずほFGと三井住友FGの当期純利益は、通期見通しに対する進捗率が49%にも達している。
三菱UFJFGの経常収益は前年同期比9.8%増、経常利益は23.5%増、四半期純利益は39.6%増で、通期業績見通しの当期純利益の目標7600億円、年間配当金の目標14円は変えていない。三菱東京UFJ銀行+三菱UFJ信託銀行+信託勘定の不良債権残高(金融再生法開示基準)の3月末と比べた増減は674億円減で、総与信額に占める比率は1.71%(-0.08ポイント)となっている。
みずほFGの経常収益は前年同期比6.2%増、経常利益は38.2%増、四半期純利益は34.8%増。通期業績見通しの当期純利益10.7%減の5000億円、年間配当金の目標6円は変えていない。不良債権残高(金融再生法開示基準)の3月末と比べた増減は392億円減で、それが総与信額に占める比率は1.64%(-0.07ポイント)となっている。
三井住友FGの経常収益は前年同期比16.3%増、経常利益は93.3%増、四半期純利益は144.7%増で、経常利益と純利益が三菱UFJFGを抜いてトップに躍り出た。通期業績見通しの経常利益4.1%減の1兆300億円、当期純利益27.0%減の5800億円、年間配当金の目標110円はいずれも変えていない。不良債権残高(金融再生法開示基準)の3月末と比べた増減は682億円減で、それが総与信額に占める比率は2.22%(-0.05ポイント)となっている。
前期までメガバンクの決算は、保有する国内株式の株価下落による評価損を国債など債券の売却益でカバーする状況が長く続いていたが、4~6月期はがらりと様相が変わってきた。昨年11月以来の株価上昇で保有する日本株の評価損益は改善し、しかも4月に始まった「異次元金融緩和」で、2%のインフレ目標達成を目指して日銀が市場から大量の国債を買い入れてマネーを供給するオペレーションを拡大したからである。
株式関係損益は、三菱UFJFGは673億円改善して+128億円、みずほFGは969億円改善して+208億円、三井住友FGは1249億円改善して+561億円となった。もはやバランスシートを悪化させる存在ではなくなった。
一方、日銀の買い入れオペに応じて三大メガバンクの国債保有残高は4~6月期で大きく減少した。3月末と比べて三菱UFJFGは8兆4000億円、みずほFGは6兆2000億円減り、三井住友FGは三井住友銀行単体で20兆7000億円を11兆5000億円に9兆2000億円、44.4%も圧縮した。国債売買益も大幅に減少していて、「国債離れ」が大きく進んでいる。「銀行は預金を集めても適切な融資先がないから国債を買うしかない」と言われた状況はすでに変わっている。
とはいえ、国債売却で得た現金をただちに融資に回せるほど民間の資金需要はまだ旺盛ではない。3月末と比べると三菱UFJFGは連結貸出金残高のうち国内法人貸出を約1000億円減らしている。みずほFGは貸出金残高を約3000億円増やしたが国債売却額の4.8%程度にすぎず、三井住友FGは約9600億円増やしているが、それでも9兆2000億円にのぼる国債売却額の10分の1程度にすぎない。
国債売却で得た資金の多くはいま日銀当座預金にプールされていて、リスクマネーが世の中に出回ってほしい日銀にとってはもどかしい状況だ。アベノミクスの三本の矢の「金融緩和」の矢が放たれて供給されたマネーが向かう先として、「財政出動」の矢だけだと投資が活発化する産業は限定される。この先、「成長戦略」の矢が効果をあげて民間の幅広い産業で投資が活況を帯びるまで、貸出は一時待機中というのが現状だ。
2013年は、従来の「BIS規制」に代わって国際的に業務を展開する銀行に課される新しい資本規制「バーゼル3」の導入元年。三大メガバンクは「中核的自己資本(Tier1)」の比率を実質7.0%以上にするように求められている。3月末のTier1比率は三菱UFJFGが11.1%、みずほFGが8.29%、三井住友FGが8.6%でいずれも7.0%を上回っているが、株式評価損益が改善すれば比率をさらに上積みできるので、日経平均が3月末の水準の12397円を割り込まない限り、心配はいらないだろう。
むしろ過剰資本の状態を放置することなく、増配、自社株の買い入れ・消却のような株主還元策を活発化させる見通しもあり、あるいは思い切って資金を投じて戦略的なM&Aに動くことも考えられる。いずれにしても株式市場に話題を提供して騒がせることになりそうだ。(編集担当:寺尾淳)