音楽業界は今、過渡期を迎えている。世界的にみてもCDの売り上げが伸び悩んでいる反面、音楽配信サービスの売り上げが年々増加しており、配信市場は世界で56億ドルの売り上げを獲得する巨大市場に膨れ上がりつつある。
米国レコード協会の調査によると、米国の音楽ダウンロード販売額は2011年に前年比で17.3%増となって順調な伸びをみせている。一方、日本でも携帯電話からスマートフォンへのユーザーの移行に伴って、携帯電話向けの「着うた」のダウンロード数が減り、数の上では縮小傾向にあるものの、PC利用者向けの利用者は徐々に増えているのだ。
音楽業界で問題となっている違法ダウンロードについても、各国それぞれの対応や対策、そして何よりも、サービスと環境が充実してきたことで大幅な減少傾向にある。違法ダウンロードのリスクを背負うよりも、正規サービスを利用した方がメリットがあるからだ。
例えば、海外で人気の「Spotify(スポティファイ)」などは、広告表示を条件に、一定時間無料で曲をストリーミング再生することが可能だ。約2000万曲が登録されており、Facebook経由で友人に紹介できるソーシャル連携も魅力の一つだ。
音楽配信市場の拡大のキーワードは「コンテンツ」「無料/定額」「ソーシャル」といわれている。大規模CDショップに勝るとも劣らない圧倒的なコンテンツ量。そして、それらを条件付であれ無料、もしくは定額で楽しめるという手軽さ、さらには音楽の楽しみ方を広げるソーシャル連携。これらの充実したサービスがあれば確かに、違法なことをしてリスクを背負ってまで得られるメリットは皆無に近いだろう。ところが、日本の音楽業界では、未だにインターネット配信に対して保守的な姿勢をとっており、違法ダウンロードやコピーに対する警戒心をあらわにしているが、このままでは世界の流れから取り残され、またもやガラパゴス化してしまうのではないかという懸念もある。
日本国内でもKDDI<9433>の「LISMO unlimited」や、ソニー<6758>の「Music Unlimited」などの定額サービスがあるが、限られた機種やメーカーに依存するものも多く、オープンなイメージは少ない。
そんな中、LINE株式会社は21日、千葉県の舞浜アンフィシアターで開催されたカンファレンス「Hello, Friends in Tokyo 2013」の席上で、コミュニケーションアプリ「LINE」上において、音楽配信サービス「LINE MUSIC」を年内に開始することを発表した。購入した楽曲はLINEで繋がっている友人と共有することもできるという。日本の若い世代に圧倒的な人気を誇るLINEだけに、一旦火がつけば、日本の音楽配信市場を一気に手中に収めかねない。
さらに、Spotifyまでもが、いよいよ年内にも日本に上陸するのではないかという噂が浮上しており、今年末から来年にかけて、日本の音楽業界は大きな変換を余儀なくされる可能性が出てきた。(編集担当:石井絢子)