マツダは、2013年8月27日に、「SKYACTIV技術」搭載車の販売拡大に対応するため、本社のエンジン工場(広島市南区)における「SKYACTIV-D」を含めたスカイアクティブ・エンジンの年間生産能力を、2014年末までに3割ほどアップさせ年間100万基に増強すると発表した。昨2012年7月に、40万台体制から倍増させたばかりの工場の生産能力アップの報である。これには、日本で後述するような「賢い消費者が誕生した」ことに、理由がありそうなのだ。
2012年、日本ではおよそ100万台のハイブリッドカーが販売され、販売台数で1位はトヨタ・アクア、2位が同じくトヨタ・プリウスで、ハイブリッド車がベストセラーカーのワン・ツーを決めた。ちなみに3位フィット、4位フリードは、ともにホンダ車でハイブリッド車をラインアップしている。
ご存じのように世界初の量産型ハイブリッドカーは1997年にトヨタが、「21世紀に間に合いました」と喧伝したプリウス。以後、いくつものモデルが登場し、昨年度は登録車の3割に達するほどのボリュームゾーンに成長した。ただ、2012年まではトヨタ/レクサス連合とホンダの2社だけがハイブリッドカー市場をほぼ独占している状況で、2013年になって富士重工業や日産などの他メーカー、ドイツなど海外メーカーが参入しはじめた。特に、ポルシェ、アウディ、メルセデス、BMWなどドイツ・メーカーの参入が際立つ。EU圏で強化されつつある排ガス規制とメーカーごとの燃費規制をクリアするための方策とハイブリッド車投入は同義となった。高価なポルシェなどのラグジュアリーブランドあっても、燃費規制と排ガス規制からは逃れられないのが現状で、このあたりを一挙に解決するのがハイブリッド&プラグインハイブリッドなのだ。
しかしながら、ハイブリッド車にもネガティブな側面はある。最大の問題は、車両価格が高価になることだ。先頃発売された国産大衆車のカローラでも、同等のガソリン車比でおよそ30万円の価格差が生まれる。この差額をガソリン代で相殺するのは困難だ。そして、最も多品種ハイブリッドカーを販売するトヨタでは、ハイブリッドのエネルギー貯蔵庫「ニッケル水素バッテリー」の保証を「5年未満、5万キロ」として、以後の交換は有償(最も安いアクア用でも12.915万円で交換工賃別)なのだ。だから、トヨタ製ハイブリッド車の多くは3回目の車検(7年目)を受けず廃棄されている。車検費用にニッケル水素バッテリーの代金+交換工賃の支払いが重たいからだと想像できる。これは、ある意味で「エネルギーの無駄遣い」だ。現在のクルマなら、ふつうに使えば、自動車税が増額される登録後13 年以降も平気で使えるのに……だ。
そこで、「実はハイブリッド車はECOじゃないかも?」気が付き始めた人たちが注目したのが、マツダのクリーンディーゼル車だ。2012年、クロスオーバーSUVであるマツダ CX-5の販売台数は3万5438台で、2012年SUV国内販売台数第1位(全乗用車で24位)。うち、クリーンディーゼル「SKYACTIV-D」搭載車が2万6835台だ。 購買層は30~50歳代を中心に幅広いという。今年、2013年に入って「SKYACTIV-D」搭載車の人気は拡大、そのコストパフォーマンスの高さは、CX-5だけではなく同社アテンザでもクリーンディーゼル人気が広がっている。
「SKYACTIV-D」ディーゼルの最大のポイントは、わずか2.2リッターの排気量にもかかわらず42.8kg.mという5リッターガソリンエンジンに匹敵する最大トルクを2000rpmという低回転域で発生するドライバビリティの高さにある。しかも、フルサイズSUVながらJC08モード燃費18.0-18.6km/リッターと好燃費。レクサスのハイブリッドSUVであるレクサスRX450hのJC08モード燃費16.4-17.4km/リッターと比較されたい。しかも、RX450hはプレミアムガソリン、CX-5は軽油で動く。高価なハイブリッドシステムのデメリットに気がついた人は確かに存在するのである。(編集担当:吉田恒)