ハイブリッドで進む、レアアースの再利用

2013年06月22日 19:26

 2011年の東日本大震災以降、再生可能エネルギーへの関心が高まっているが、貴重なのは何もエネルギーだけではない。蓄電池や発光ダイオード、磁石などのエレクトロニクス製品の性能向上に必要不可欠な材料であるレアアース(希土類)も、我々の生活には欠かせない貴重な資源である。

 これまで、レアアースの生産は中国が9割を占める独占市場だった。そして、その大部分をレアアース消費大国である日本が輸入してきた。しかし、2010年に発生した中国漁船衝突事件に端を発する尖閣諸島をめぐる一連の問題から、レアアースの価格が急騰。中国に対する供給不安から、中国産レアアース依存からの離脱と、省希土類や脱希土類の動きが進んでいる。

 12年11月に一般社団法人電子情報技術産業協会が発表した「レアメタル・レアアース資源の現状と課題」の中でも、中国問題に対処するための5つのレアアース対策が掲げられている。すなわち、拡散技術の開発による「レアアース使用量の削減」、レアアース以外の材料で機能を代替する「代替品の開発」、「中国外鉱山の開発」「レアアースの備蓄」、そして「レアアースのリサイクル技術の開発」だ。

 そのような状況の中、本田技研工業<7267>は「レアアースのリサイクル」を積極的に進めており、電池交換や廃車などによって不要になったハイブリッド車用のニッケル水素バッテリーから抽出したレアアースを、ハイブリッド車用モーターの磁石へ再利用する、世界で初めての取り組みを行っている。

 同社は以前より、日本重化学工業株式会社と共同で、小国事業所にて使用済みのニッケル水素バッテリーからレアアース酸化物を抽出する作業を行ってきたが、その酸化物をさらに溶融塩電解し、純度99%以上の金属レアアースとして抽出するリサイクル事業を3月から開始している。

 ホンダはさらにこの取り組みを発展させるため、6月18日には、日本重化学工業株式会社だけでなく、TDKとも共同で推進していくことに合意したことを発表した。今後は、全国の販売店でホンダが回収したバッテリーから日本重化学工業がレアアースを抽出し、そのレアアースをTDKがハイブリッド車用モーターの磁石として再利用するスキームを3社共同体制で進めていく。

 社団法人新金属協会の報告によると、12年1月~11月のニッケル水素電池の生産個数は、3.52億個程度、対前年同期比約23%の増となっている。また、同期ハイブリット車生産台数は、130万台程度、対前年同期比約100%の増であったことから、ニッケル水素電池生産個数アップは、ハイブリット車生産台数増が主要因と考えられている。

 ホンダは新型アコードをはじめとするハイブリッド車の開発すすめながら、今後は製品のリユース・リサイクルにつながるネットワークも強化して、モビリティ社会全体による環境負荷低減を目指すとしている。積極的に使用する一方で、それを再利用する道も積極的に開発する。これも一種のハイブリッドといえるだろう。(編集担当:藤原伊織)