お薬手帳が大切なことは百も承知なのだが、ついつい薬局に持っていくのを忘れたり、紛失してしまうことがある。常に持ち歩いているICカードやスマホにお薬手帳が、内蔵されれば便利なのにと考えていたら、どうやらそれが現実となるようである。
ソニー<6758>は、クラウド上で個人情報に配慮したデータの蓄積を可能とするシステムを新たに開発した。その最初のアプリケーションとして、非接触ICカード技術 FeliCa(フェリカ)のカードを利用した電子お薬手帳の試験サービスをこの秋より川崎市で開始する。
従来のクラウドを利用した一般的なサービスは、利用者の個人情報とデータの両方がペアで同じクラウド上のサーバーに保存されるため、万一外部または内部からシステムへの侵入があった場合、これらの情報が同時に漏えいするリスクがあった。これに対して今回同社が新たに開発したシステムは、個人情報とデータを分離し、データのみをクラウドに保存する。このため、仮にクラウド上のデータへの不正アクセスがあったとしても、個人情報が守られる構造を実現しているという。
医師が処方した薬の名称や量、服用回数、飲み方などの調剤情報を記録するお薬手帳は、複数の医療機関で薬が処方された場合でも、医師や薬剤師が薬の重複や不適切な飲み合わせがないか等の確認を行うのに役立つもので、現在は主に紙の手帳が利用されている。紙の手帳は、薬局から受け取る調剤情報シールを貼り付けたり、自分でメモを書き込めたりする手軽さがある一方で、前述したように薬局への携行を忘れてしまった場合や、手帳自体を紛失した場合等、調剤履歴を継続的に蓄積、管理するのが難しいという一面もある。
しかし、この電子お薬手帳を利用すれば、FeliCaチップが埋め込まれたカードを薬局の端末にかざすだけの簡単な操作で、調剤履歴の閲覧と調剤情報の記録を行うことができる。さらにスマートフォン用アプリケーションをインストールすれば、モバイル端末からも情報閲覧できるほか、診察を受けた際の症状や、服薬後の副作用、アレルギーなどの記録も可能だ。また、薬局は専用のソフトウェアをインストールしたパソコンおよびタブレット、並びにカードリーダー等を用意することで、システムを構築できる。(編集担当:久保田雄城)