前週末13日のNYダウは75ドル高と反発。8月の小売売上高の伸びが市場予測を下回って17~18日のFOMCで量的緩和縮小の先延ばし、あるいは縮小幅が小さくなるという観測で上昇した。「FRB議長にサマーズ氏有力」という日経の報道をホワイトハウスは否定したが、そのサマーズ氏が15日に自ら議長指名を辞退。対抗馬イエレン氏なら量的緩和政策が長く続くという観測で16日のNYダウは118ドル高と続伸した。長期金利が低下して為替はドル安になりドル円は一時98円台をつけ、17日朝方の為替レートはドル円が99円台前半、ユーロ円が132円台前半で、前週末から円高が大きく進行した。
三連休明けの日経平均は52.32円高の14456.99円で始まる。午前9時10分頃には一時マイナスに沈むが、9時30分頃から約50円の一段高。きっかけはメリルリンチの投資家説明会に安倍首相が「明らかに今の日本は買い」というストロングバイのメッセージを寄せたという日経の速報だが、30分限り有効で再び13日終値近辺に逆戻りした。
前場は14500円台前半のプラス圏でもみあうが、後場は開始10分ほどでマイナス圏まで急落。それでも「NTねじれ現象」が続きTOPIXは午後1時30分頃までおおむねプラスで踏ん張ったが、これもマイナスに。日経平均の最安値は14318円で、13日のSQ値14323円が下支えになっていたが、大引け前にそれも崩れ安値引け。日経平均終値は93.00円安の14311.67円で、TOPIXは-3.64の1181.64だった。売買高は36億株、売買代金は1兆8887億円で再び2兆円を割った。
株価指数が揃ってマイナスでも値下がり銘柄739より値上がり銘柄890のほうが151も多い珍しい現象。だが東証1部業種別騰落率は14対19でマイナス優勢で、プラス上位は卸売、証券、電気機器、鉱業、繊維、空運など。マイナス上位は情報・通信、海運、医薬品、小売、電気・ガス、食料品などだった。
日経平均プラス寄与度では東京エレクトロン<8035>が孤軍奮闘し+8円。マイナス寄与度は「御三家」とKDDI<9433>が1~4位を占めて合計で-77円と、日経平均の下げ幅の8割以上を占めていた。
メガバンクはみずほ<8411>値動きなし、三菱UFJ<8306>値動きなし、三井住友FG<8316>15円安とさえない。証券株は、野村HD<8604>が6円高、大和証券G<8601>が3円高、松井証券<8628>が中間配当の10円増配見通しを発表し47円高。SBIHD<8473>も48円高と好調だった。
「中興の祖」と呼ばれた最高顧問の豊田英二氏が亡くなったトヨタ<7203>は40円安。訃報が伝えられると市場は下落で弔意をあらわした。ホンダ<7267>も後場さえず20円安。メキシコ工場増強を検討と報じられ、増強すれば海外生産が国内のそれを上回る見込みマツダ<7261>も3円安で、円高に振れては自動車株には買いが向かいづらい。
引き続き中・低位の建設関連株、不動産・含み資産株がランキングをにぎわせるが、ハイテク主力株もソニー<6758>が19円高、キヤノン<7751>が30円高と存在感を示す。ローム<6963>はエコカー用のパワー半導体を4倍増産というニュースが好感され165円高になった。シャープ<6753>は2時すぎ、9月中間期の営業利益が従来予想の2倍の300億円に達しそうだという日経の速報が出て、マイナス圏からロケット発進し23円高で売買高10位、売買代金11位。本物のロケット「イプシロン」のほうは14日午後2時に無事に打ち上げられたが、8月27日に打ち上げ19秒前に延期になったとたんに急落したIHI<7013>もNEC<6701>も1円高どまりで、仕切り直しではやはり関心が薄れてしまうようだ。
僕らは五輪関連銘柄探偵団が探し出したのがホウスイ<1352>で、23円高で値上がり率5位。本社は東都水産<8038>と同じ築地で、5年前に子会社化した中央冷凍が、選手村ができる晴海の隣の豊海水産埠頭に大型倉庫を所有する。東都水産も一時ストップ高の46円高で値上がり率2位と3日続伸した。同じ築地勢の築地魚市場<8039>、大都魚類<8044>はともにストップ高の50円高。5円高で年初来高値を更新したヤマタネ<9305>は江東区越中島が本社で東京港に近いが、含み資産だけでなくこの日は政府が国家戦略特区で農業法人への企業の参入を促すために50%以上の出資も認めるという規制緩和のニュースも入り、コメの卸売を行う農業・TPP関連銘柄としても買われていた。
国土交通省が羽田空港の国際線着陸料を来年から引き下げると発表しJAL<9201>は80円高で年初来高値を更新。JALも広い意味では五輪関連。週明けもアップルの株価は下げ止まらずアップル関連のフォスター電機<6794>は48円安で年初来高値から3日続落した。稲葉製作所<3421>は13日に発表した2014年7月期の通期業績見通しの14%営業減益が嫌気され84円安で値下がり率6位。鉄鋼価格の上昇が懸念材料。第一三共<4568>は、インド子会社のランバクシーに対しアメリカ食品医薬品局(FDA)が安全性懸念で警告を発し、同社株が16日のムンバイ市場で30%を超える暴落を喫するという悪材料があり129円安で値下がり率5位。対米輸出差し止めになれば後発薬を重視する第一三共のグローバル戦略には痛手になる。
この日の主役は20日にiPhoneを発売する携帯キャリア3社。売買代金ランキング3、5、9位と売買を伴って下落し、ソフトバンク<9984>は250円安、auのKDDIは370円安で値下がり率3位、新規採用のNTTドコモ<9437>も4300円安だった。ドコモの下落を受けNTT<9432>も200円安。KDDIとソフトバンクは日経平均マイナス寄与度1位と2位を占めて足を引っ張った。iPhoneをめぐり「実質0円」、割引、下取りなどあの手この手の販促競争が激化し、利用者には朗報でもコストがかさみ株価には悪影響を及ぼす。エリアの広さとつながりやすさでソフトバンクに勝り、iPhone欲しさのドコモからの乗り換えが多かったauは、iPhone旧機種の下取りや「おかえり割」を繰り出すドコモへ「ただいま~」されてしまう危機感があり、iPhone5cの予約をかき集めようと1万円キャッシュバックの実弾射撃を断行してKDDIの下げ幅は-7.16%で3社中最大になった。iPhoneはすでに利益率の高いフラッグシップ機ではなく、販売競争の結果が携帯キャリアの収益に重大な影響を及ぼす主力普及機になっている。(編集担当:寺尾淳)