人類の歴史は、火を扱うところから始まった。火を扱うことで暖をとり、外敵から身を守り、調理をし、そして暗闇の中に光を灯した。やがて、それは灯明や燭台となり、今日の電灯へと進化を遂げていく。ろうそくの明かりは、1879年にエジソンが発明した白熱灯に受け継がれ、1938年にはアメリカで蛍光ランプが発売されたことにより、放電灯の時代が始まった。そして1955年にGaP系の発光が確認されたことにより、第四世代のあかりといわれるLEDの歴史が始まった。つまり、照明の歴史は人間の文明の証であるともいえるだろう。そして照明は今、ただ照らすというだけではなく、住居空間を演出するインテリアとしても重要な役割を担うようになっている。
省エネ・節電の意識が高い 日本では、海外諸国よりも比較的LED照明の普及が早く、家電量販店を見てみても、多くのLED照明が並んでいるすそのLED照明の主な特長は、蛍光灯と比較した場合で40%以上の省エネ効果、40000時間を越える長寿命の二つと言えるだろう。
LED照明の市場には多くの企業が参入しており、競争は激しさを増している。単純な価格競争にならないように各メーカーも苦労しているようで、他社製品との差別化を図るために、LED照明を単なる照明ではなく、インテリアとして機能やデザインに付加価値を持たせるメーカーも出始めている。
たとえば、パナソニック<6752>は、明るさにシンクロして光の色が変化する、「シンクロ調色LED照明」を開発し、さまざまな暮らしのシーンにふさわしいあかりを演出している。また、シャープ<6753>では、「さくら色LED照明」を展開して好評を得ている。
このように、機能に付加価値を持つ製品は増え始めているが、器具のデザインを全面に打ち出した製品はまだまだ少ない。
そんな中、半導体メーカーのローム<6963>が設立したAGLED(アグレッド)がLEDデザインシーリングとして「TOMORI シリーズ」の販売を開始した。これは、アクリルカバーの形が特殊(非対称)で、デザイン面からインテリアとして扱える数少ないLED照明として期待されている。もちろん、インテリアデザイナーが手掛けるなど、デザインを追求するLED照明も存在するが、LEDは直線的な配光特性を持つため、照明として扱うには調整が必要で、凝りすぎるカバーの形はどうしても高価格となっている。今回、一般のLED照明と変わらない価格帯のデザイン照明が出てきたのは消費者にとっても有益ではないだろうか。
LED照明市場は今後もさらに拡大すると見られているが、省エネや長寿命以外の特色をどれだけ打ち出せるかが、シェア獲得の大きな要素となるのは間違いない。これまで一般家庭では照明器具にこだわることはあっても、「あかりをデザインする」という発想は少なかった。しかし、LEDが急速に普及し、技術も高度に発展しつつある今、あかりそのものをインテリアの一つと考えるのは特別なことではない。人類はいよいよ、あかりをデザインする時代に突入したのだ。(編集担当:藤原伊織)