矢野経済研究所が発表した「照明市場に関する調査結果2013」によると、2012年のLED照明市場は、メーカー出荷金額ベースで前年比195%の4,204億円を達成しており、東日本大震災以降の節電・省エネ意識の高まりを背景に、エネルギー効率に優れるLED照明への需要の増加が顕著に現れている。家庭での使用も一般的になりつつあり、シーン別でインテリア性の高い商品も数多く展開されており、裾野は広がっている。
しかし、LED照明・器具市場が急速に拡大し、成長を遂げる一方で、価格や価値がすでに飽和状態にあるのではないかという懸念もある。また、省エネや長寿命など、ユーザーが求める基本機能はクリアされているだけでなく、電子部品や制御機器、住宅メーカーなど様々な事業者の新規参入により競争が激化することで価格が下がっており、メーカー各社は差別化の一手を模索しているような状況だ。
具体的な例としては、パナソニックは光を広げる光学設計技術によって、白熱電球とほぼ同じ約300度の光の広がりを実現した商品を展開している。LED照明は白熱電球に比べて光の広がる角度(配光角)が狭いため、「カバー付き照明器具で発光面が均一に光らない」「光が広がらず暗く感じる」といった難点があったが、同社のLEDはこれを克服した商品となっている。また、シャープは、癒しと快眠をテーマにした桜色LEDを展開して好評を得ており、独自の市場を獲得することに成功している。
これらの商品展開から、LED照明に求められる顧客のニーズが省エネ目的から色や調光などの明かり本来の楽しみ方へ移りつつあることが推測できる。もちろん、省エネや長寿命性能は必要ではあり、LED照明の最大の利点と特色であることに替わりはない。しかしながら、今や特別なものではなくなってしまったのだ。
そしてこの度、この激化する市場に一石を投じるLSI製品が開発されて、業界関係者の間で早くも話題となっている。そのLSI製品とは、ロームグループのラピスセミコンダクタが開発した、フルカラーLED照明用8bitローパワーマイコン「ML610Q111 / ML610Q112」だ。このLSIは、LED照明制御に必要なPWMポートを6ch搭載し、1677万色以上のフルカラーを自在に制御できる。さらに、同社の製品にもあるBluetooth制御を利用すれば、スマートフォンからLED照明をフルカラーで調光・調色することができるという。なお、同社はこの製品を10月1日から開催される「CEATEC JAPAN 2013」のロームブースでも展示するとしている。
これが普及すれば、これまで一般家庭や小規模店舗などでは難しかった、生活シーンやインテリアに合わせた細やかな照明演出も手軽に実現できる。例えば、家庭では部屋の壁紙や調度品に合わせて照明の色を調節できるし、店舗などでは料理や商品、季節などに合わせた雰囲気作りや、各種パーティの演出など、インテリア感覚で照明を楽しむことが可能となる。
いずれかのメーカーから同社のLSIを搭載した照明器具の登場を待つしかないが、そう遠くない内に「明かりを楽しむ」というコンセプトのLEDが店頭に並ぶ日が訪れることだろう。(編集担当:藤原伊織)