NTTドコモが異業種買収を続けるのは戦略の迷走ではない

2013年11月02日 19:27

 ドコモ<9437>が有機野菜の宅配サービスを行っている「らでぃっしゅぼーや」を子会社化したのは、昨年3月のこと。その6月には、タワーレコードも買収している。そして、今度は料理教室である。
 
 NTTドコモと、「ABCクッキングスタジオ」の持株会社である株式会社ABC ホールディングスは、ABCが展開する料理教室事業の拡大による、新たな収益機会の創出などに向け、ドコモがABCホールディングスの発行済普通株式の51%を取得することについて合意したと発表した。

 「ABCクッキングスタジオ」は日本全国に展開する料理教室。教室を「スタジオ」と呼んだり、仕切りのないガラス張りのオープンな教室になっていたりとこれまでの料理教室のイメージを破った戦略が功を博し、全国126の教室を持ち、会員数は28万人。20歳から34歳までの女性で未婚者が生徒の中心だ。

 国内だけではなく、アジア展開にも積極的で現在、中国・上海に4教室、北京に1教室の合計5つの教室を所有している。

 ドコモとABC ホールディングスは、この資本提携により、ABCが保有する料理教室や料理関連コンテンツなどのアセットとドコモが保有するモバイルやクラウド技術などのノウハウを融合させ、リアルとデジタルを連携させた新たなサービス開発やドコモとABCの顧客基盤の相互連携を推進する。

 ドコモとABCは、これまでにもタブレットを活用した新たな料理レッスンスタイルの共同実験など、料理教室におけるICTの活用において協業関係を構築してきた。 この資本提携を通じて協業関係を一層強化し、料理・食事を主軸としたライフスタイルを豊かに便利にする取り組みを推進するとしている。

 具体的には、自宅などの料理教室外においても活用できる料理関連サービス(料理レッスン動画・料理のコツなど)をデジタルコンテンツとして制作し、ドコモが提供するサービスとも連携。食事、運動、睡眠などを主軸としたユーザーのライフスタイルをトータルサポートするサービスの開発を予定している。

 有機野菜、CDショップに続いて、今度は料理教室の買収。本業の通信事業とは無関係の業種ばかりの子会社化に、一部には、戦略不明ではないかと疑問視する声も上がっている。だがそれは見当はずれの見方でしかない。NTTドコモの異業種買収は去年、突然始まったものではなく、それ以前にも、「ショップジャパン」のブランドでテレビショッピング番組を制作する、異業種のオークローンマーケティングを子会社化しているのだ。

 2011年11月に公表されたNTTドコモの文書・「中期ビジョン2015」の第3章のタイトルはこうだ。「産業・サービスの融合による新たな価値創造・モバイルを核とする総合サービス企業への挑戦」。この通り、戦略の迷走でも不明でもなんでもなく、まさに予定通りにビジョンが進行している結果なのだ。NTTドコモはもっと先を見ているのだろう。

 確かにこのところのドコモは本業では暗いニュースが続くが、逆にいえば、11年の時点で、このような状況をも想定していたのかもしれない。そう考えると実に、タフな企業である。そう、料理教室「ABCクッキングスタジオ」の買収は、まさにNTTドコモの中期ビジョンに基づく新たなる展開なのだ。(編集担当:久保田雄城)