前週末8日のNYダウは167ドル高。10月の失業率は7.3%に上昇したが、非農業部門雇用者数の増加数が20万4000人と大幅に伸び、市場予測の12万人増を7割も上回った。9月の増加数も16万3000人に上方修正された。16日間の連邦政府機関閉鎖の影響で落ち込む予想が多かっただけにポジティブサプライズで、これだけ良いと量的緩和縮小開始早期化懸念も吹き飛ばし、ドルは99円台まで高くなった。午前中にミシガン大学消費者景況感指数が予想外の悪化をみせマイナス圏にタッチする場面もあったが一時的で、午後は引けにかけてさらに値を切り上げた。11日朝方の為替レートはドル円は99円台前半、ユーロ円は132円台前半になっていた。
日経平均は184.68円高の14271.48円と大きく上昇して始まるが、早々と14300円にタッチしても定着せず徐々に下げる展開。為替のドル円が円高方向に進み一時99円を割り込んだためで、14240円まで下げたところで切り返し午前10時台には11280円台まで戻るが長続きせず、14250円前後のもみあいが前引けまで続いた。後場はドル円が再び99円を割り込んだため14208円まで下げるが、14200円は割らず底は堅い。その後は再び14250円近辺の小動きで推移する。
午後2時に10月の景気ウォッチャー調査が発表され、現状判断DIは東京五輪決定効果がはげ落ちたのか1.0ポイント下落して51.8で8月以来のダウン。先行判断DIは0.3ポイント上昇して54.5で、内閣府は景気判断「着実に持ち直している」を据え置いた。上海などアジア市場が軟調で、TOPIXの上昇幅は+10を超えられず新興市場も弱含み。大引け前に上げ幅が200円を超えたが、少し上がれば戻り待ちの売りが出るこの日のパターンを最後まで繰り返し、終値は183.04円高の14269.84円だった。好条件が揃ってもこの程度の上昇にとどまり、需給の悪影響はまだ大きい。TOPIXは+9.23の1185.65に抑えられた。売買高は21億株、売買代金は1兆7175億円で、依然として薄商いが続く。
値上がり銘柄908に対して値下がり銘柄は715と4割以上あり、東証1部33業種別騰落率もプラス21業種に対してマイナス12業種で、全面高とは言いかねる状況。プラスのセクターの上位は化学、情報・通信、保険、金属製品、医薬品、銀行など。マイナスのセクターの下位は鉱業、空運、電気・ガス、海運、その他金融、ゴム製品などだった。
日経平均225種の騰落は166対45で、やはりこの日は主力株中心の上昇だった。プラス寄与度1位はソフトバンク<9984>、2位はKDDI<9433>と好調だった通信勢が入り寄与度は合計+32円。マイナス寄与度1位で-2円のオリンパス<7733>は、通期見通しの営業利益は上方修正でも市場予測に届かず、最終利益は特別損失を計上して下方修正したため70円安で3日続落した。
前週ふるわなかったメガバンクは中間決算発表の週を迎えみずほ<8411>2円高、三菱UFJ<8306>5円高、三井住友FG<8316>95円高。スルガ銀行<8358>が9月中間期の最終利益が35.4%増で120円高で値上がり率7位に入るなど地銀株が全面高で銀行セクターの騰落率を押し上げた。証券も野村HD<8604>3円高、大和証券G<8601>17円高と堅調だった。
前週に決算を通過した自動車は為替が前週より円安に振れたこともあり、トヨタ<7203>50円高、ホンダ<7267>65円高、富士重工<7270>37円高と株価を上げる銘柄が目立った。電機は日立<6501>が9円高と良かったが、ソニー<6758>、シャープ<6753>はともに8円安と軟調。パナソニック<6752>も7円安だった。
8日に好材料が重なってストップ高になった宮地エンジニアリング<3431>は、その日に買えなかった投資家がいたためか売買高1位、売買代金3位で、続伸し25円高で値上がり率5位に入った。それに匹敵するほど買われたのが売買高2位、売買代金6位のヤマダ電機<9831>。前週に営業赤字の中間決算を発表後したが株価は持ち直し、この日は24円高で値上がり率6位だった。決算説明会で山田昇社長が来年度のV字回復、その次の年度のさらなる業績拡大を強調したという。商売人はやっぱりカラ元気でも威勢がいいほうが好感を持たれる。
農機が中国など海外で好調だったクボタ<6326>は通期の税引前利益を18%上方修正し、前年比約2倍の最高益見通しが好感され74円高。通期経常利益を5%上方修正して最高益更新見通しのニッパツ<5991>は78円高で値上がり率9位。通期経常利益見通しを16%上方修正したシチズンHD<7762>は48円高で年初来高値を更新し値上がり率10位。通期経常利益見通しを7%上方修正した横河電機<6841>は80円高で値上がり率11位。通期経常利益見通しを36%上方修正した日新鋼HD<5413>は傘下のステンレス鋼管事業の2社を統合するという報道もあり67円高と、業績見通し上方修正組は素直に株価が上昇をみせていた。
JR東日本<9020>は都心と羽田空港を直結する新路線を検討と伝えられ100円高。田町駅付近から空港近くの天空橋駅付近の地下を通り川崎市に抜ける既設の貨物線を活用するという。新線建設需要を見込んで鉄道土木の鉄建<1815>は売買高6位、売買代金8位と売買が盛り上がり前場は高かったが、後場は売られて5円安。東鉄工業<1835>は17円高。京浜急行<9006>には強敵出現だが、一時マイナスでも終値は4円高だった。
ゲーム関連では、ネクソン<3659>は7~9月期の純利益が下振れしSMBC日興証券が目標株価を引き下げて240円安で値下がり率1位。岩井コスモ証券がレーティングを引き下げたDeNA<2432>は57円安で年初来安値を更新し、Klab<3656>も50円安で値下がり率15位と良くなかった。ガンホー<3765>は1300円安で10月28日以降2週間の下落幅が3割を超えた。コロプラ<3668>も232円安。一方、ボウリングやカラオケなどリアル娯楽のラウンドワン<4680>は株主優待拡充を好感され85円高で値上がり率3位に入っていた。
ミクシィ<2121>は9月中間期で4億円の営業赤字を計上し、通期も16億円の営業赤字見通しで38円安。ツイッターやフェイスブックやLINEなどライバルがどんどん出現して分が悪いが、強引な手法の人員整理の噂でブラック企業呼ばわりされているのも悪材料。貸借対照表の現預金残高は122億円あり、グリー<3632>のように割増退職金をつけて希望退職を募集し、リストラ費用を特損計上するようなスマートな方法をとっても資金繰りに窮するはずはないのだが……。
この日の主役は通信株。NTT<9432>は9月中間期の税引前利益が5%増益で今期の配当を10円増額したことに加え、発行済株式の約14%、1億8500万株というスケールの自社株消却と通期170円への増配を発表し、てんこ盛りの株主優遇策が好感され150円高。10月の携帯電話契約数が純増に転じたNTTドコモ<9437>は15円高。KDDIは200円高で年初来高値を更新し、ソフトバンクも140円高だった。売買代金ランキングではソフトバンク1位、NTT5位、KDDI7位で、東京市場は「通信の日」だった。(編集担当:寺尾淳)